「建設業許可を取ればどんな建設工事も請け負う事が出来る!」
実はこれは大きな間違いです。
建設業許可には、請け負える工事の種類に応じて29の業種が用意されており、この業種の選択を間違うとせっかく許可を取っても望んでいる工事が請負えない可能性があります。
皆さんが取るべき業種について理解頂けるよう、本記事では建設業許可の「業種」について詳しくご紹介していきます。
本記事のポイント
許可が取れる業種は全部で29業種
1社で複数種類の業種をとっても良い
許可を取っていない業種の工事は請け負えない
建設業許可の「業種」について
建設工事と一口にいっても、世の中には様々な種類の工事が存在しており、そこで必要な技術や知識は全く違います。例えばビルの建設工事とトンネルの建設工事では全く技術が求められる事は容易に想像がつくと思います。
そこで、建設業許可は、専門とする工事に応じた「業種」単位での許可制度を取り入れています。
建設業許可の業種許可制
・業種ごとに許可を取得する
・業種により請け負える工事が決まる
・全部で29業種あり複数取得も可能
業種ごとに許可を取得する
建設業許可は必ず業種単位で許可を取得します。例えば左官工事を請け負う会社は左官工事業の許可を、塗装工事を請け負う会社は塗装工事業の許可を取得する事になります。どちらの工事も請け負いたい場合は、左官工事業と塗装工事業の両方の許可を取らなければなりません。
業種により請け負える工事が決まる
持っている許可業種以外の業種に該当する工事を請 け負う事は禁止されています。例えば左官工事業の許可しか持っていない会社が500万円以上の塗装工事を請け負う事は法律違反になります。
建設業許可を取る時は自社が請け負いたい専門工事に即した業種を選択しなければいけません。
※500万円未満の軽微な工事はそもそも許可無しで請け負えます
全部で29種類あり複数取得も可能
業種は全部で29種類用意されており、それぞれの業種に応じて請け負える工事の種類が決まっています。あらゆる専門工事を請けれる許可は存在しませんので、もし全ての業種の建設工事を請け負いたいのであれば29業種全ての許可を取る必要があります。
建設業許可の29業種一覧(クリックで詳細ページに)
建設業許可の29業種を下記の一覧で全て紹介します。
建設業法の中で建設工事が、2種類の一式工事(土木一式・建築一式)と、27種類の専門工事に分類されており、それぞれの工事に応じた形で29種類の業種が規定されています。
詳しく知りたい業種があれば、業種名をクリックして頂くと各業種の詳細ページを見て頂けます。
※詳細ページでは各業種に該当する工事の詳細や、業種ごとに異なる許可条件の詳細を解説しています
略号 | 建設工事の種類 | 業種 | 略号 | 建設工事の種類 | 業種 |
土 | 土木一式工事 | 土木工事業 | ガ | ガラス工事 | ガラス工事業 |
建 | 建築一式工事 | 建築工事業 | 塗 | 塗装工事 | 塗装工事業 |
大 | 大工工事 | 大工工事業 | 防 | 防水工事 | 防水工事業 |
左 | 左官工事 | 左官工事業 | 内 | 内装仕上工事 | 内装仕上工事業 |
と | とび・土工・コンクリ ート工事 | とび・土工工事業 | 機 | 機械器具設置工事 | 機械器具設置工事業 |
石 | 石工事 | 石工事業 | 熱 | 熱絶縁工事 | 熱絶縁工事業 |
屋 | 屋根工事 | 屋根工事業 | 通 | 電気通信工事 | 電気通信工事業 |
電 | 電気工事 | 電気工事業 | 園 | 造園工事 | 造園工事業 |
管 | 管工事 | 管工事業 | 井 | さく井工事 | さく井工事業 |
タ | タイル・れんが・ブロ ック工事 | タイル・れんが・ブロッ ク工事業 | 具 | 建具工事 | 建具工事業 |
鋼 | 鋼構造物工事 | 鋼構造物工事業 | 水 | 水道施設工事 | 水道施設工事業 |
鉄 | 鉄筋工事 | 鉄筋工事業 | 消 | 消防施設工事 消 | 消防施設工事業 |
舗 | 舗装工事 | 舗装工事業 | 清 | 清掃施設工事 | 清掃施設工事業 |
浚 | しゅんせつ工事 | しゅんせつ工事業 | 解 | 解体工事 | 解体工事業 |
板 | 板金工事 | 板金工事業 |
建設業許可を取りたいと思ったらまずは業種を決めよう
建設業許可を取りたい!と思ったら、まずこの29業種の中からどの業種で許可を取るかを決めましょう。
それぞれの業種で請け負える建設工事は建設業許可のガイドラインで細かく決められています。本サイトでも各業種ごとに詳しい解説ページを用意しており、その中で業種ごとに請け負える工事について詳しく解説していますので、気になる方は上記一覧の業種名をクリックしてみて下さい。
【重要】正しい業種判断の方法
取る業種を決めるときに、正しい業種判断をする事が非常に大切です。ここでは簡易的にできる業種判断の方法をご紹介します。
その方法は、国土交通省が出している以下の業種区分の考え方をもとに、自社の工事が本資料中のどの業種に該当するか確認する方法です。一般的な建設工事であればこの方法で業種判断が可能です。
「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)」※外部サイト
ただし多くの場合、様々な工事が組み合わさっていたり、上記の資料中にないような工事を請負われているケースもあり、業種判断は専門家でも難しいケースがあります。申請をする前に、一度専門の行政書士や許可行政庁の窓口に問い合わせてみることをオススメします。
取りたい業種の許可条件を満たしているかもポイント
希望する業種で許可が取れるかは、その業種に関する施工技術があるかもポイントになってきます。具体的には、取りたい業種に関する国家資格やその業種での一定期間の実務経験が求められます。
上記の一覧からジャンプできる各業種の詳細ページには、それぞれの業種に求められる許可条件を詳しく載せていますので、そちらもぜひ参考にして下さい。
業種は何種類申請しても申請手数料は同じ!
建設業許可を申請する際に、1業種しか申請しない場合でも、29業種全て申請する場合でも、申請手数料は同じです。その為、複数業種を取りたい場合は、出来るだけ1回の申請で全ての業種を申請した方がお得です。
なお、許可を取った後に、持っていない業種を追加したい場合は、「業種追加」という申請をすれば追加する事が可能です。ただし、その業種追加の申請には申請手数料(5万円)がかかります。
附帯工事は許可を持っていなくても施工可能
許可を持っている業種以外の業種に該当する工事は原則請負禁止です。ただし例外として、附帯工事の場合は許可を持っている業種以外の業種の工事を請け負う事ができます。
附帯工事
メインの建設工事を施工する為に必要となる工事でそれ自体が独立した目的を持たない工事
附帯工事とは、主たる建設工事を施工するために必要を生じた他の従たる建設工事又は主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる建設工事であって、それ自体が独立の使用目的に供されるものではないものをいう。
附帯工事の具体的な判断に当たっては、建設工事の注文者の利便、建設工事の請負契約の慣行等を基準とし、当該建設工事の準備、実施、仕上げ等に当たり一連又は一体の工事として施工することが必要又は相当と認められるか否かを総合的に検討する
引用:国土交通省 建設業許可事務ガイドライン
附帯工事の例
壁の塗装工事を施工する為に必要な足場等仮設工事(とび・土木工事業の許可なしで施工可能)
これはメインの塗装工事をする上でどうしても必要で切り離せない工事になるため附帯工事として認められます。足場を組む為にわざわざ発注者が別のとび業者に工事を依頼する手間を省略する目的があります。
附帯工事として認められない例
壁の塗装工事を施工する際に、塗装する箇所とは関係のない場所に足場を組む工事
まずそんなことは無いと思いますが、上記の例はメインの工事をする上で必要な工事とは認められない為、附帯工事としても認められません。
一式工事の許可があれば全ての専門工事が請け負える!は間違い
「一式工事の許可があれば全ての専門工事を請け負えますか?」というお問い合わせはよく頂きますがこの答えはNOです。
一式工事は全ての工事を請け負えるわけではなく、専門工事を受注するにはそれぞれの業種の許可を取る必要があります。一式工事の許可は原則として、大規模または施工内容が複雑な工事を、元請業者の立場で総合的にマネージメントする事業者向けの許可となります。
一式工事
総合的な企画、指導及び調 整のもとに土木工作物又は建築物を建設する工事
業種以外に許可種類の判断が必要な要素
建設業許可はここまで紹介した業種以外にも、下記要素により種類わけがされます。業種と比べると判断基準が明確ですので、正しい理解さえしていれば間違える心配はあまりありません。
営業所の所在地
会社の営業所がひとつの都道府県内にのみ存在する場合は「知事許可」を、2つ以上の都道府県にまたがって存在する場合は「大臣許可」を取得します。それぞれ許可の申請先と申請手数料が異なりますが、許可を取る為の条件は同じです。
下請けに出す工事の金額
元請業者として下請けに出す工事の金額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上の場合は「特定建設業許可」が必要です。それ以外の建設工事は全て「一般建設業許可」を持っていれば請け負えます。
両者は許可を取る為の条件が異なり、特定建設業許可の方がより厳しい条件が求められます。
申請する許可種類を判断する流れ
ここまでの話をまとめると、申請する許可の種類は以下の流れで判断する事になります。
①営業所の所在地
営業所の場所に応じて「知事」か「大臣」か
×
②下請けに出す工事の金額
元請として下請けに出す金額に応じて「一般」か「特定」か
×
③請け負う建設工事
請負う工事に応じて業種を判断(複数選択可)
具体例
A建設会社は東京都内に営業所を2カ所構え、左官工事を専門としている。仕事は全て元請業者から受ける下請け工事のみで、A社からさらに下請け工事を発注する事はない。
⇒A社は 知事・一般・左官工事業の許可を申請すればOK!
まとめ
以上、ここまで建設業許可の29業種についてご紹介してきました。
自社がどの業種に当たるかを判定する事は、事業内容にとっては難しい判断になるケースもあります。自社の業種が何に該当するか分からない場合は申請先の窓口か、建設業許可を専門とする行政書士に相談してみると良いでしょう。