経営事項審査のW評点(社会性等)について解説

「経営事項審査の点数を自社である程度把握できるようになりたい!」

そんな事業者様の熱い気持ちにお応えするために、本サイトでは経営事項審査の点数算出方法を徹底解説しています!

本記事では、総合評定値の要素のひとつ「W評点(社会性等)」について、その項目から算出方法までわかり易く解説します。

【おさらい①】そもそも経営事項審査とは何か?

経営事項審査とは、国や地方公共団体などが発注する公共工事を直接請け負おうとする場合には、必ず受けなければならない審査制度で、略して「経審」と呼ばれます。

「直接請け負おうとする」つまり「元請として受注」する場合に必要な審査ですので、下請けとして公共工事に参加するだけであれば、「経審」を受ける必要はありません。

公共工事を発注する国や都道府県などは、競争入札に参加しようとする建設業者について資格審査を行い、その審査の結果を経て発注する建設業者を決定します。

この資格審査は「客観的事項(客観点)」と「発注者別評価(発注者点)」のそれぞれの点数を合計し、総合点数として評価しますが、そのうちの「客観的事項(客観点)」の点数に利用されるのが、「経営事項審査」で算出される総合評定値(P点)になります。

建設業者と経営事項審査および公共工事の関係性

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出典:国土交通省 関東地方整備局

経営事項審査についてもっと知りたい方は下記記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみて下さい。

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【おさらい②】経営事項審査の総合評定値(P点)の算出方法

経営事項審査で算出される総合評定値(P点)は、審査を申請した建設業者の「経営状況(Y評点)」と「経営規模等(X・Z・W評点)」から導き出されます。

経営事項審査の仕組み

経営状況(Y評点)  経営規模等(X・Z・W評点)  総合評定値 (P点)
この「経営状況(Y評点)」と「経営規模等(X・Z・W評点)」はそれぞれ下記の審査項目を数値化することで求められます。
数値化された各評点を、評点ごとに決められた掛け率をかけてから合算する事で、総合評定値(P点)が求められます。

各評点の具体的審査項目

区分評点審査項目最高点最低点掛率審査
機関
経営状況分析純支払利息比率1,595020%
登録経営状況分析機関
負債回転期間
売上高経常利益率
総資本売上総利益率
自己資本対固定資産比率
自己資本比率
営業キャッシュフロー(絶対額)
利益剰余金(絶対額)
経営規模等評価
経営規模工事種類別年間平均完成工事高2,30939725%
許可行政庁
経営規模自己資本額2,28045415%
利払前税引前償却前利益
技術力工事種類別技術職員数2,44145625%
工事種類別元請完成工事高
その他審査項目
(社会性等)
労働福祉の状況1,966-1,99515%
建設業の営業継続の状況
防災活動への貢献の状況
法令遵守の状況
建設業の経理に関する状況
研究開発の状況
建設機械の保有状況
国際標準化機構が定めた規格による
登録の状況
若年の技術者及び技能労働者の育成
及び確保の状況

総合評定値(P点)算出方法

総合評定値(P)=0.25(X₁)+0.15(X₂)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W)
※最高点は「2,143」、最低点は「-18」になります

【本題!】W評点(社会性等)の算出方法について

それではいよいよ本記事の本題「W評点(社会性等)」に入っていきましょう。

W評点は、労働福祉や法令遵守といった会社の社会的能力・貢献度を評価する指標で、マイナス点があるのが特徴です。

まずはそのW評点(社会性など)について、審査項目と点数の算出方法を詳しく見ていきましょう。

W評点(社会性等)は9つの指標から算出される!

W評点は会社の社会性能力・貢献度を示す9つの指標から構成されます。

まずはその9つの指標を数値化し、次にそれらの数値を計算式に当てはめることで、W評点が算出されます。

段階① 9指標の数値化

まず下記9つの指標(W1~W9)を数値化します。
それぞれの数値化(計算方法)は後ほど詳しく解説しますので、ここでは指標のイメージをぼんやりと掴めれば十分です。

W1:労働福祉の状況
W2:建設業の営業継続の状況
W3:防災活動への貢献の状況
W4:法令順守の状況
W5:建設業の経理に関する状況
W6:研究開発の状況
W7:建設機械の保有状況
W8:国際標準化機構が定めた規格による登録の状況
W9:若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況

段階② W評点の算出

W1~W9の指標を数値化したら、次はその数値から下記式により「W評点」を算出します。

W評点
=(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8+W9)×10×190/200
※小数点以下は四捨五入

w-points

9つの指標(W1~W9)について解説

それではW評点を構成する9つの指標をそれぞれ詳しく見ていきましょう。

W1:労働福祉の状況

W1の労働福祉の状況は、社会保険制度への加入状況を点数化します。

加入している場合に加点される「ア」のグループと、未加入の場合に減点される「イ」のグループに分けられます。

アとイの各項目の合計点がW1になります(ア+イ=W1)。

それぞれの項目と点数は下記の通りです。

項目点数
加入未加入
建設業退職金共済制度150
退職一時金制度若しくは企業年金制度150
法定外労働災害補償制度150
雇用保険0-40
健康保険0-40
厚生年金保険0-40

なお、イの項目について、雇用保険は労働者を1人も雇用していない等の理由で適用除外の場合は0点として計算します。

また健康保険と厚生年金保険は、常時使用する従業員が4人以下である個人事業主等の理由で適用除外の場合は0点として計算します。

W2:建設業の営業継続の状況

W2の建設業の営業継続の状況は、建設業の営業年数に応じた点数(ア)と、民事再生法又は会社更生法の適用有無による減点(イ)の合計で算出されます(ア+イ=W2)。

ア.営業年数に応じた点数

営業年数を下記表に当てはめることで、年数に応じた点数を算出します。
6年以上から加点がされるようになります。

営業年数点数営業年数点数
35年以上6019年28
34年5818年26
33年5617年24
32年5416年22
31年5215年20
30年5014年18
29年4813年16
28年4612年14
27年4411年12
26年4210年10
25年409年8
24年388年6
23年367年4
22年346年2
21年325年以下0
20年30

なお、営業年数は建設業許可を受けた時点から起算し、審査基準日までの期間とします(年数に年未満の端数があるときは切捨て)。
※営業休止期間があればその期間は営業年数から控除

また、民事再生法や会社更生法の適用を受けた場合は、再生手続終結の決定又は更正手続終結の決定を受けた時から起算します。

イ.民事再生法又は会社更生法の適用の有無

会社が民事再生手続きの再生期間中又は会社更生手続きの更生期間中の場合、60点の減点があります。

関係ない場合は0点になります。

適用の有無点数
有り-60
無し0

W3:防災活動への貢献の状況

W3の防災活動への貢献の状況は、会社の地域への防災活動に対する貢献度を評価する指標で、具体的には自治体との防災協定締結の有無により加点があります。

防災協定締結の有無点数
有り20
無し0

防災協定とは?

防災協定とは、大地震などの災害発生時、人的・物的援助を受けられるよう、自治体と民間企業間で締結される救援協定の事で「災害時応援協定」とも言われる。特に建設業者は、自治体にはない専門的な技術や知識、建設材・機材などを保有しているため、防災・救援における役割は大きく、大企業は単独で、中小企業は業界団体で締結しているケースが多い。

W4:法令順守の状況

W4の法令順守の状況では、会社が建設業法を守って事業を行っているかが評価されます。

具体的には、審査対象年に建設業法第28条の規定により、指示又は営業の全部若しくは一部の停止を命ぜられた事がある場合に、下記の通り減点されます。

会社が行政指導や処分を受けていなければ加点も減点もされません。

法令順守の状況点数
処分無し0
指示処分を受けた場合ー15
営業の一部又は全部の停止処分を受けた場合ー30

W5:建設業の経理の状況

W5の建設業の経理の状況は、監査の受審状況に応じた点数(ア)公認会計士等の経理知識のある従業員数に応じた点数(イ)を合計して算出されます(ア+イ=W5)。

ア.監査の受審状況に応じた点数

経理のスペシャリストが会計運用に関与している場合に、下記の通り加点があります。

監査の受審状況点数
会計監査人の設置20
会計参与の設置10
経理処理の適正を確認した旨の書類の提出 2
無し0

経理処理の適性を確認した旨の書類とは?

会社に常時雇用されている公認会計士、公認会計士補、税理士、1級建設業経理士の資格を持つ職員が、確認項目に沿って経理処理が適正に実施されている事を確認した旨の書類(自主監査にあたるイメージです)。確認項目や書類の書式は各自治体の経営事項審査の手引きに記載があります。

イ.公認会計士等の数

社内にいる公認会計士等の経理のスペシャリストの人数によって加点がされます。

ます、職員の資格と人数に応じて「公認会計士等数値」を出し、その数値を下記表に当てはめる事で点数を算出します。

公認会計士等数値の出し方
(公認会計士、会計士補、税理士、1級建設業経理士の有資格者数)×1+(2級建設業経理士の有資格者数)×0.4

w-points-1.jpg

引用:経営事項審査申請の手引き(大阪府)

W6:研究開発の状況

W6の研究開発の状況では、会社が費用として計上した研究開発費の額に応じて加点評価がされます。

その前に注意!
W6は会計監査人を設置している会社である事が加点の前提条件になります(会計監査人を設置していない会社は無加点)。
研究開発費をその定義に則り正確に計上するには、会計監査人のような専門家による精査が必要だからです。

審査対象年とその前年における研究開発費の平均額(2期平均)を下記表に当てはめて点数を算出します。

w-points-2.jpg

引用:経営事項審査申請の手引き(大阪府)

研究開発費には何が該当するか?

研究開発費に何が該当するかは難しい問題ですが、一応は公認会計士協会の指針でその定義付けがされています。
その中で、研究とは「新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究」、開発とは「新しい製品・サービス・生産方法についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化すること」とされています。
かなり専門的な話になりますので興味のある方のみ深堀されると良いと思います。

W7:建設機械の保有状況

W7の建設機械の保有状況では、特定の建設機械を自社で保有またはリース契約をしている場合に、その台数に応じて加算されます。
※リース契約の場合、1年7か月以上リース期間が残っていることが必要

建設機械であれば何でも良いわけではなく、下記の通り加点対象となる機械が決まっています。
また、ただ所有しているだけでなく所定の自主検査を行い、その記録簿等を提示する必要があります。

対象機械範囲
①ショベル系掘削機ショベル、バックホウ、ドラグライン、クラムシェル、クレーン又はパイルドライバーのアタッチメントを有するもの
②トラクターショベルバケット容量が0.4立方メートル以上のもの
③ブルドーザー自重が3トン以上のもの
④移動式クレーン吊り上げ荷重3トン以上のもの
⑤大型ダンプ車車両総重量8トン以上、または最大積載量5トン以上で、「経営する事業の種類」として「建設業」を届け出ていて、かつ、表示番号の指定を受けているもの
⑥モーターグレーダー自重5トン以上のもの

w-points-3.jpg

引用:経営事項審査申請の手引き(大阪府)

↓対象機械の保有またはリース契約台数を下記表に当てはめて点数を算出します。

所有及びリース台数点数所有及びリース台数点数
15台以上157台11
14台156台10
13台145台9
12台144台8
11台133台7
10台132台6
9台121台5
8台120台0

W8:国際標準化機構が定めた規格による登録の状況

W8の国際標準化機構が定めた規格による登録の状況は、会社が特定の規格についてその登録(認証)を受けているかが評価されます。

具体的には下記認証を会社として取得している場合に、それぞれに応じた加点がされます。

登録状況点数
ISO9001とISO14001の登録10
ISO9001の登録5
ISO14001の登録5
無し0

ISO9001とISO14001とは何か?

「ISO」とは国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略称で、国家間で流通する製品やサービスに最低限の安全性や品質を担保する為に、世界中で用いられる共通規格を設定する事で世界貿易を促進する役割を担っている国際機関である。
このISOが発行する国際規格は「ISO+数字」という名称で管理される。加点対象となる「ISO9001」は品質に対する国際規格で、「ISO14001」は環境に対する国際規格にあたる。

W9:若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況

W9の若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況では、会社における若手(35歳未満)の技術者の在籍状況に応じて加算がされます。

具体的には下記表の通りですが、満たしていない場合に減点される事はありません。

若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況点数
技術職員名簿に記載の35歳未満の技術職員数が技術職員名簿全体の15%以上の場合1
新たに技術職員名簿に記載された35歳未満の技術職員数が技術職員名簿全体の1%以上の場合1

W1~W9からW評点を算出!

これでW1~W9の数値化方法の解説は終了です。

算出したW1~W9の数値を用いてW評点を算出しますが、最後にもう一度、そのW評点の算出方法を載せておきます。

W評の点算出方法
=(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8+W9)×10×190/200
※小数点以下は四捨五入

経営事項審査のW評点(社会性等)について解説まとめ

ここまで経営事項審査のW評点(社会性等)について解説してきました。

項目が多く算出がややこしそうなW評点ですが、経審の得点アップを狙う上でとても重要になるのもこのW評点ですので、ぜひ一度このページを見ながら自社のW評点の算出に挑戦してみて下さい。

また本サイトには、他の評点についても解説しているページがありますので、そちらもぜひ参考にしてみて下さい。

例えばZ評点についての解説記事はコチラ・・・

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また経営事項審査についてもっと知りたい方は下記ページで詳しく解説していますのでぜひ参考にしてみて下さい。

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