決算変更届(事業年度終了届)とは?未提出だと罰金!?

建設業許可を保有している業者は、毎年、決算変更届(事業年度終了届)を提出する義務があるのはご存じでしょうか?

「毎年と言ってもいつ頃出せば良いの?」
「どんな書類を出せば良いの?」
「決算変更届って出していないとどうなるの?」

そんな疑問やお悩みをお持ちの皆様のために、本記事では建設業許可の決算変更届について、わかりやすく解説していきます。

本記事のポイント


 決算変更届は建設業許可業者は必ず提出が必要

 事業年度終了後4ヶ月以内の提出が義務

 未提出の場合は許可の更新や経審の受付不可


決算変更届の提出は建設業者の義務

決算変更届とは、建設業許可を持っている業者が必ず提出しなければならない以下の届け出のことです。

決算変更届
建設業者が事業年度毎に作成する、その事業年度の工事実績や財務状況を報告する届け出。

これは建設業法第十一条にも定められており、許可業者の毎年の義務になります。地域によって呼び名が異なり、「決算変更届」や「事業年度終了届」などと呼ばれます(本記事では決算変更届に統一します)。

「変更届」という名前から、何か変更があったときに作る書類というイメージを持たれがちですが、毎年決算(事業年度)が終了するたびに作る必要がある書類です。税理士さんに作成してもらう決算報告書の建設業会計バージョンとイメージするとわかりやすいかもしれません。

なお、この届け出の内容は、一般に公開され誰でも見れるようになります。その為、発注者や施工主が、依頼する許可業者の経営状況や実績を確認する事ができ、発注者保護の観点でも重要な届け出になります。

事業年度終了後4カ月以内に提出する必要がある

この決算変更届は、事業年度終了後4ヶ月以内に提出しなければなりません。例えば、3月末決算の事業者であれば、7月末までに決算変更届を提出しなければなりません。

個人事業主の事業年度は開業時期に関わらず1/1~12/31と決められています。
そのため、決算変更届の提出期限は必ず4月末ということになります。

期限内に提出しないと懲役や罰金の対象に

決算変更届を期限の4ヶ月以内にしていない場合どうなってしまうのでしょうか?

決算変更届を提出していない場合、建設業法違反となり、「懲役6ヶ月又は100万円以下の罰金」が科せられます。それだけこの決算変更届は重要な許可業者の義務に位置付けられているという事です。

ここまで読んで、「当社は許可業者だけど、そんな書類一度も出したことない・・・」という方はとても心配されている事と思います。結論、決算変更届は未提出であっても、悪質なケースを除いて即罰金が科せられるケースはあまりなく、自治体によっては口頭注意や、始末書の提出などで許してもらえる場合が多いです。また、4カ月の期限経過後も受け付けてもらうことは基本的には可能なので、一度許可を受けている自治体に相談してみることをオススメします。

実際に、決算変更届を提出していなければ生じる不都合は罰金だけではありません。決算変更届を提出していなければ、許可の更新や業種追加の申請は受け付けてもらえません。受け付けてもらうには、提出していない事業年度分全ての決算変更届を提出するしかありませんが、その作業をしているうちに許可の更新期限が切れてしまえば、許可は失効しますので更新自体ができなくなってしまいます。そうならない為にも、きちんと許可業者の義務として毎年決算変更届は提出するようにしましょう。

決算変更届で必要な書類と書き方

それでは決算変更届で必要な書類を具体的に見ていきます。
個人と法人で提出書類が異なりますので注意しましょう。

提出書類一覧

 名称をクリックすると書き方を含めた詳細な解説ページが見れます
 「●:必要」「△:変更があった場合のみ必要」「ー:不要」で必要可否を表示
 各都道府県によって必要可否は異なりますので、必ず申請先の手引きを確認ください

番号書類の名称個人法人
変更届出書(自治体で書式は異なります)
工事経歴書(様式第二号)
直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第三号)
使用人数(様式第四号)
建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表(様式第十一号)
定款の写し
貸借対照表(様式第十五号)
損益計算書、完成工事原価報告書 (様式第十六号)
株主資本等変動計算書(様式第十七号)
注記表(様式第十七号の二)
附属明細表(様式第十七号の三)※不要なケースあり
貸借対照表(様式第十八号)
損益計算書(様式第十九号)
納税証明書(法人税 or 個人事業税)
事業報告書(様式指定なし)※株式会社のみ必要
健康保険等の加入状況(様式二十号の三)

個人事業の場合、決算変更届は4月末が提出期限となりますが、個人事業税の納税証明書は 自治体によっては4月までに交付されない事もあり、その場合は、所得税の確定申告書のうち税務署の受付印※のある第一表の写しを添付するケースがあります(各自治体に確認下さい)

書類で届け出る内容は、大きくわけて該当事業年度の「工事実績」「財務状況」「雇用状況」などになります。

特に「工事経歴書」と「直近3年の各事業年度における工事施工金額」の書き方は細かいルールがありややこしいので、ご自身で作成をお考えの方は、詳細ページで書き方を確認してみて下さい。

決算変更届は一般に公開され誰でも見る事が可能になる

先ほども簡単にふれましたが、提出された決算変更届は、役所に行けば誰でも閲覧が可能になります

これは、この決算変更届という制度が、発注者の保護という目的も含んだ制度である為です。これは一方で、決算変更届が提出されていないことも、当然発注者が調べればわかってしまうという事でもあります。会社の信用度という点でも、決算変更届はきちんと期限内に提出しておいた方が良いんですね。

ではみなさんが決算変更届を提出すべき行政庁はどこになるかを見ていきましょう。

決算変更届の提出先

決算変更届の提出先は、許可を受けた行政庁の窓口になります。知事許可を持っている業者は許可を受けた都道府県の各窓口に、大臣許可を持っている業者は管轄の交通整備局に提出をしましょう。

下記がそれぞれの窓口の一覧になります。

知事許可・提出先一覧
都道府県名担当部署(窓口)都道府県名担当部署(窓口)
北海道建設部建設政策局建設管理課滋賀県土木交通部監理課
青森県県土整備部監理課京都府建設交通部指導検査課
岩手県県土整備部建設技術振興課大阪府住宅まちづくり部建築振興課
宮城県土木部事業管理課兵庫県県土整備部県土企画局総務課建設業室
秋田県建設部建設政策課奈良県県土マネジメント部建設業・契約管理課
山形県県土整備部建設企画課和歌山県県土整備部県土整備政策局技術調査課
福島県土木部技術管理課建設産業室鳥取県県土整備部県土総務課
茨城県土木部監理課島根県土木部土木総務課建設産業対策室
栃木県県土整備部監理課岡山県土木部監理課建設業班
群馬県県土整備部建設企画課広島県土木建築局建設産業課建設業グループ
埼玉県県土整備部建設管理課山口県土木建築部監理課建設業班
千葉県県土整備部建設・不動産業課建設業班徳島県県土整備部建設管理課
東京都都市整備局市街地建築部建設業課香川県土木部土木監理課契約・建設業グループ
神奈川県県土整備局事業管理部建設業課愛媛県土木部土木管理局土木管理課
新潟県土木部監理課建設業室高知県土木部土木政策課
山梨県県土整備部県土整備総務課建設業対策室福岡県建築都市部建築指導課
長野県建設部建設政策課建設業係佐賀県県土整備部建設・技術課
富山県土木部建設技術企画課長崎県土木部監理課
石川県土木部監理課建設業振興グループ熊本県土木部監理課
岐阜県県土整備部技術検査課大分県土木建築部土木建築企画課
静岡県交通基盤部建設業課宮崎県県土整備部管理課
愛知県都市整備局都市基盤部都市総務課鹿児島県土木部監理課
三重県県土整備部建設業課沖縄県土木建築部技術・建設業課
福井県土木部土木管理課
大臣許可・提出先一覧
地方整備局名担当部署名(窓口)管轄エリア
北海道開発局事業振興部建設産業課北海道
東北地方整備局建政部建設産業課青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
関東地方整備局建政部建設産業第一課茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県
北陸地方整備局建政部計画・建設産業課新潟県、富山県、石川県
中部地方整備局建政部建設産業課岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
近畿地方整備局建政部建設産業第一課福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国地方整備局建政部計画・建設産業課鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国地方整備局建政部計画・建設産業課徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州地方整備局建政部建設産業課福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
沖縄総合事務局開発建設部建設産業・地方整備課沖縄県

決算変更届は自分で作れる?プロに頼んだ方が良い?

「決算変更届は自分で作れますか?」こういった質問は良く頂きます。

結論、各自治体が作り方の手引きを出していますので、それをみれば誰でも作れるようになっています。ただし初めて決算変更届を作る場合は、時間と手間が当然かかります。また、この決算変更届は誰でも見れる事も考慮した方が良いです。建設業会計に詳しくない方がただ税理士さんの作った決算報告書を転記した場合、違和感がある記載内容になってしまうリスクもあります。

このあたりを考慮した上で、ご自身でチャレンジしてみるか、行政書士等の専門家にお任せするか判断されると良いと思います。

なお、経営事項審査を受ける場合は、決算変更届の書き方には注意が必要です。経営事項審査は決算変更届の内容を元に審査を受けることになり、書き方を間違うと経営事項審査にも影響が出てしまいます。経営事項審査を行政書士さんにお願いしている方は、決算変更届もその行政書士さんにお任せする事をオススメします。

経営事項審査について詳しく知りたい方はコチラ

決算変更届のまとめ

以上、ここまで決算変更届についてご紹介しました。

建設業許可を持っている業者は、事業年度が終了するごとに、その終了から4カ月以内に、決算変更届を許可行政庁に提出しなければなりません。この決算変更届によって許可行政庁は、許可業者が健全な経営を行えているかを確認することが出来るのです。

また、決算変更届は一般に公開されることから、発注者も注文する業者の経営状況を確認でき、発注者の保護にもつながっています。なお、許可業者の会社名や役員に変更があった際に提出する「変更届」は、また別のものになりますので注意しましょう。

忘れがち!変更届が必要な事項について徹底解説

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