建設業許可では「常勤性」という言葉がたびたび登場します。
許可を取る為に求められる「ヒト」の条件には、この「常勤性」が求められます。
この記事を読めば・・・!
・常勤性を証明する為の確認書類がわかる!
建設業許可の常勤性について
建設業許可の常勤性とは、常に職場で勤務していることが求められる人物に必要な条件になります。
まず一般的な「常勤」という言葉を見てみましょう。
いわゆる会社勤めと聞いたときにまずイメージする一般的な働き方ですね。
建設業許可で求められる常勤性も同じことです。
もっとも定義っぽい書き方がされている箇所とてしガイドラインが参考になります。
「役員のうち常勤であるもの」とは、原則として本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事している者がこれに該当する。
つまり「お休みの日以外は毎日決まった職場に出社してそこで働いている」ことを建設業法でも常勤と呼んでおり、この常勤である状態のことを「常勤性がある」と言います。
建設業許可で常勤性を求められるのは特定の役員など重要な人物
では建設業許可を取る際に、この常勤性が求められる人物はだれでしょうか?
常勤性が必要な人物
・専任技術者(営業所に配置が必須)
・令3条使用人(営業所長や支店長など)
この3人は(兼務するケースや複数いるケースもあるので必ずしも3人ではありませんが)、必ず常勤性が求められます。
経営業務の管理責任者には常勤性が求められる
経営業務の管理責任者とは、建設業許可を取る為に必要な「ヒト」の条件のひとつで、建設業の経営経験のある会社役員や個人事業主の事を指します。
建設業許可は経営経験が豊富な会社役員や個人事業主がいないと取れませんが、その役員や事業主はその会社に常勤である必要があるのです。
つまり、「許可を取りたいけど社内に経営経験がある人間がいないから、経営経験のある知り合いに一応ウチの役員になってもらって、経営業務の管理責任者の条件をクリアしよう!」というずるい考えは通用しないんです。
それをする場合、その知り合いの方には、毎日会社に出勤して働いてもらう必要があるという事です。
なお、経営業務の管理責任者の常勤性については建設業法の中で記載されています。
法人である場合においてはその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)のうち常勤であるものの一人が、個人である場合においてはその者又はその支配人のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。
なお、経営業務の管理責任者については下記ページで詳しく解説していますので参考にして下さい。
建設業許可を取る為には、必ず理解しておかないといけないポイントが「経営業務の管理責任者」についてです。 2020年10月に改正建設業法の施行がされ、業法上からはこの言葉はなくなり「経営業務の管理能力」という言葉に置き換わりましたが、そ[…]
専任技術者には常勤性が求められる
専任技術者も、建設業許可を取る為に必要な「ヒト」の条件で、資格や一定の実務経験を有しており、建設工事における専門的な知識や技能を持っていると認められる人物です。
専任技術者は営業所に必ず配置しなければ許可は取れませんが、条件として、毎日その営業所に出勤して勤務する必要があります。
つまり、専任技術者は2つ以上の営業所を掛け持ちすることが出来ないんですね(毎日2つの営業所で勤務するのは体がひとつでは出来ませんね)。
例えば、「ウチには営業所が2つあるけど、資格をもった従業員は1人しかいないから、その者に両方の営業所の専任技術者になってもらおう!」という事は認められません。
その場合は、塩飽や実務経験がある人物を新しく雇うか、営業所をひとつ閉めるしかありません。
なお、専任技術者の常勤性はガイドラインの中で規定されています。
「専任」の者とは、その営業所に常勤して専らその職務に従事することを要する者をいう。会社の社員の場合には、その者の勤務状況、給与の支払状況、その者に対する人事権の状況等により「専任」か否かの判断を行い、これらの判断基準により専任性が認められる場合には、いわゆる出向社員であっても専任の技術者として取り扱う。
なお、専任技術者については下記ページに詳しくその解説を載せています。
「建設業許可を取るには資格や実務経験10年が無いといけない!」 こんな話を聞いたことはないでしょうか?これは建設業許可の要件に「専任技術者」の配置が求められるからです。本記事では建設業許可を取りたい方のために必ず知っておかなければなら[…]
令3条使用人には常勤性が求められる
令3条使用人とは、主たる営業所以外の従たる営業所に設置が義務付けられ、そこで一定の権限を与えられている支配人や支店長、営業所長のことを指します。
営業所での権限を持った重要な人物ですので、当然毎日出社しなければいけないわけです。
令3条使用人にも下記の通り常勤性が求められます。
「建設業法施行令第3条に規定する使用人」とは、(中略)これらの者は、当該営業所において締結される請負契約について総合的に管理することや、原則として、当該営業所において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事していることが求められる。
なお、令3条使用人についてもっと知りたい方は下記記事で詳しく解説しています。
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常識的に考えて常勤が出来ない場合には常勤性は認められない
建設業許可を取る時には、先ほど説明した会社の重要な人物たちが、それぞれ常勤性がちゃんとあるかを審査されるわけですが、常識的に考えて毎日出社できないと判断された場合は、常勤性は認めてもらえません(つまり許可は取れません)。
常勤性が認められないのは下記のようなケースです。
②他の営業所や他の会社で常勤しないといけない仕事をしている人
③兼業で建築士や宅地建物取引士をしている人
④他に商売や法人の役員をしていてそちらが本業に近いような人
これはガイドラインの中で「常勤性が認められない」とはっきり明記されています。
次に掲げるような者は、原則として、「専任」の者とはいえないものとして取り扱うものとする。
① 住所が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能な者
② 他の営業所(他の建設業者の営業所を含む。)において専任を要する者
③ 建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引士等他の法令により特定の事務所等において専任を要することとされている者(建設業において専任を要する営業所が他の法令27により専任を要する事務所等と兼ねている場合においてその事務所等において専任を要する者を除く。)
④ 他に個人営業を行っている者、他の法人の常勤役員である者等他の営業等について専任に近い状態にあると認められる者
建設業許可を取る時に常勤性を証明するには証拠書類が必要
建設業許可を取る時に、経営業務の管理責任者、専任技術者、令3条使用人については、常勤性を証明しないと許可を取る事ができません。
ではどうやって常勤性を証明するのでしょうか?
常勤性の証明は、証拠書類を提出することで行います。
ただし、それぞれに証明が必要な人物がどういったポジションや雇用体系をとっているかで、必要な証拠書類は変わってきます。
それぞれについて解説していきます。
地域により求められる書類は少しずつ異なります。各都道府県の手引きや申請窓口への確認をしましょう。
法人の役員または従業員の場合は健康保険か住民税で
常勤性を証明したい人が、法人に勤める役員や従業員の場合は下記書類のいずれかのセットによって証明可能です。
・健康保険被保険者証(申請時に有効なもの)
・健康保険被保険者標準報酬決定通知書(直近年のもの)
※事業所名が記載されていないものは不可
※建設国保等の場合は、被保険者証と加入証明書が必要
・住民税特別徴収税額通知書(特別徴収義務者用)
・住民税特別徴収税額通知書(納税義務者用)
※双方とも直近年のものが必要です。
・住民税特別徴収税額通知書(特別徴収義務者用)
・住民税特別徴収税額通知書(納税義務者用)
※原則75歳以上の方が対象。65歳以上~74歳以下の方も一定程度の障害状態にあれば対象
個人事業主の場合は国民健康保健で
常勤性を証明したい人が個人事業主の場合は下記書類で証明可能です。
・直前の個人事業主の所得税の確定申告書のうち、税務署の受付印のある第一表
※電子申告の場合は税務署の受信通知が必要
・市町村の長が発行する住民税課税証明書(直近年のもの)
個人事業主の専従者の場合は国民健康保険と確定申告書で
常勤性を証明したい人が個人事業主の専従者の場合は下記書類で証明可能です。
・直前の個人事業主の所得税の確定申告書のうち、税務署の受付印のある第一表および事業専従者欄又は給料賃金の内訳欄に氏名・金額の記載がある書類
※電子申告の場合は税務署の受信通知が必要
どちらも書類も必要になります。
・直前の個人事業主の所得税の確定申告書のうち、税務署の受付印のある第一表および事業専従者欄又は給料賃金の内訳欄に氏名・金額の記載がある書類
※電子申告の場合は税務署の受信通知が必要
・市町村の長が発行する住民税課税証明書(直近年のもの)
個人事業主と生計をともにする配偶者や15歳以上の親族で、年間6ヶ月以上、納税者が営む事業に従事している人。社会保険の被保険者には原則なれない、給料を支払っても経費に含まれないなど色々従業員とは異なる点があります。
就任直後の役員の場合は賃金台帳などで代用
就任直後の役員の場合は、健康保険被保険者標準報酬決定通知書などが無い場合がありますので下記書類で常勤性を証明します。
・役員報酬に関する役員会議事録
・住民税特別徴収切替申請書(市町村の受付印のある控え)
雇用直後の従業員の場合は賃金台帳などで代用
雇用直後の従業員の場合も、役員と同じく健康保険被保険者標準報酬決定通知書などが無い場合がありますので下記書類で常勤性を証明します。
・雇用契約書又は労働条件明示書(給与額が確認できるもの)
・住民税特別徴収切替申請書(市町村の受付印のある控え)
出向者の場合は出向証明書や辞令の写しが必要
出向の役員や社員については上記書類に加えて、出向協定書や出向証明書(出向元と出向先の身分関係、賃金支給負担額の明記のあるもの)および辞令の写しを用意しましょう。
常勤性の証明には必ず住民票も必要になる
上記のいずれの場合も、常勤性の証明には住民票の写し(原本・発行後3カ月以内のもの)が必要です。
住所からも常勤性に疑いがないか確認するためです。
住民票には謄本と抄本がありますが、ここでは抄本で問題ありません。
なお、現住所が住民票と異なる場合は、賃貸借契約書や公共料金の領収書など現住所がわかる書類の写しを用意しましょう。
また、住所と営業所がかなり離れている場合、長期間の通勤定期券などを求められる場合もあります。
建設業許可を取る時に常勤性を証明するための証拠書類一覧
ではここまで説明した常勤性を証明するための確認書類について一覧にまとめました。
ご自身が必要な書類を確認に漏れがないよう準備するようにしましょう。
常勤性証明の為の確認書類 | ||
対象者の区分 | 通常 | 後期高齢者医療制度被保険者 |
法人の役員または従業員 | ①② or③④ | ③④⑬ |
個人事業主 | ⑤ | ⑦⑧⑬ |
個人事業の専従者 | ⑤⑥ | ⑥⑧⑬ |
就任直後の役員 | ⑨⑩⑫ | ー |
雇用直後の従業員 | ⑨⑪⑫ | ー |
+ | ||
住民票の写し(原本・発行後3カ月以内のもの):各市区町村の窓口で申請(抄本で可) | ||
+ | ||
住民票の住所と現住所が異なる場合 | 現住所がわかる「公共料金の請求書・契約書」や「現住所の賃貸契約書・承諾書」 | |
住所から営業所まで距離がある場合 | 長期間の通勤定期券 | |
出向者の場合 | 出向協定書及び出向辞令 |
番号 | 書類 | 取得するための窓口および方法 |
① | 健康保険被保険者証(申請時に有効なもの) | 事業者が保有もしくは交付される。紛失した場合は協会けんぽの各支部に再発行申請 |
② | 健康保険被保険者標準報酬決定通知書(直近年のもの) | 事業者が保有(日本年金機構から事業者に送付)。紛失した場合は管轄の年金事務所で再発行申請 |
③ | 住民税特別徴収税額通知書(特別徴収義務者用) | 事業者が保有(地方自治体から事業者に送付)。紛失した場合は原則再発行不可(地方自治体により扱い異なる) |
④ | 住民税特別徴収税額通知書(納税義務者用) | 事業者が保有(地方自治体から事業者に送付)。紛失した場合は原則再発行不可(地方自治体により扱い異なる) |
⑤ | 国民健康保険被保険者証(申請時に有効なもの) | 個人で保有。紛失した場合は住民票のある市区町村の窓口で申請 |
⑥ | 直前の個人事業主の所得税の確定申告書のうち、税務署の受付印のある第一表および事業専従者欄又は給料賃金の内訳欄に氏名・金額の記載がある書類 ※電子申告の場合は税務署の受信通知が必要 | 個人事業主が保有。紛失した場合は所轄税務署の窓口で保有個人情報開示請求 |
⑦ | 直前の個人事業主の所得税の確定申告書のうち、税務署の受付印のある第一表 ※電子申告の場合は税務署の受信通知が必要 | 個人事業主が保有。紛失した場合は所轄税務署の窓口で保有個人情報開示請求 |
⑧ | 市町村の長が発行する住民税課税証明書(直近年のもの) | 「その年の1月1日時点の住所」がある市区町村の窓口で申請 |
⑨ | 直前3か月分の賃金台帳等 | 事業者が保有。 |
⑩ | 役員報酬に関する役員会議事録 | 事業者が保有。 |
⑪ | 雇用契約書又は労働条件明示書(給与額が確認できるもの) | 事業者が保有。 |
⑫ | 住民税特別徴収切替申請書(市町村の受付印のある控え) | 事業者が保有。 |
⑬ | 後期高齢者医療制度被保険者証 | 個人で保有。紛失した場合は市区町村の窓口で再発行申請 |
建設業許可の常勤性とは?まとめ
建設業許可を取る時に、その会社の重要な人物には常勤性が求められます。
この常勤性とは、「毎日所定の営業所に出社しそこで勤務していること」を指し、常勤性が求められるものは他の営業所の役職などは当然兼務できません。
この常勤性を求められる人物については、許可の審査時に常勤性をきちんと満たしているか確認されますので、常勤性を証明できる証拠書類を申請者は提出しなければいけません。
この証拠書類はいくつか種類があり少しややこしいので、書類を準備する前に、しっかりと証明する人に応じた必要書類を理解・確認してから作業を始めましょう。
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