建設業許可の欠格要件とはなんでしょうか?
「建設業許可は前科があると取れない!」
「建設業許可は自己破産していたら取れない!」
そんな話を聞いた聞いたことは無いでしょうか?
これらは建設業許可の欠格要件にまつわる話です(結論、前科者でも自己破産者でも許可は取れる場合があります)
この記事を読めば・・・!
・欠格要件に該当した際の対処法がわかる!
建設業許可の欠格要件について
建設業許可を取る為には、欠格要件に該当しない事が必要です。
これは建設業許可を取る為の5つの条件のうちのひとつです。
許可を取る為に必要な条件
②専任技術者(がいること)
③誠実性(があること)
④財産的基礎等(があること)
⑤欠格要件(に該当しないこと)
※5つの条件について詳しく知りたい方はコチラの記事を参照
つまり他の条件を全てクリアしていても、この欠格要件にひとつでも該当しているとその時点で許可は取れません。
ちなみにその法律的な根拠も下記の通り、建設業法の中でしっかり明記されています。
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次の各号のいずれか(中略)に該当するとき、又は許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、許可をしてはならない。
では具体的にその欠格要件とはどんなものがあげられるのか見ていきましょう。
欠格要件は10個以上規定されその全てに該当していない事が条件
欠格要件は10個以上項目があり、「書類」に関する欠格要件と「人」に関する欠格要件に分けられます。
ざっくり言うと書類の欠格要件は2項目、人の欠格要件は13項目です。
どれかひとつでも該当したらその時点で許可は下りませんので注意してください。
ではまず一覧にまとめましたので一通り確認してから、各論を説明していきます。
番号 | 事項 | |
書類 | ① | 許可申請書や添付書類中の重要な事項について虚偽の記載があるとき |
② | 許可申請書や添付書類中の重要な事実について記載が欠けているとき | |
人 | ① | 成年被後見人もしくは被保佐人又は破産者で復権を得ない者 |
② | 不正の手段で許可を受けた、又は営業停止処分に違反したことで許可を取り消され、取消しになった日から5年を経過しない者 | |
③ | ②の取消し処分にかかる通知があった日から当該処分があった日までの間に廃業の届出をした者で当該届出の日から5年を経過しない者 | |
④ | ②の取消し処分にかかる通知があった日以前60日以内に、③の廃業の届出をした法人の役員等若しくは令3条使用人(営業所長等)、又は届出をした個人の令3条使用人で、当該届出の日から5年を経過しない者 | |
⑤ | 営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者 | |
⑥ | 営業の禁止を命ぜられ、その禁止の期間が経過しない者 | |
⑦ | 禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 ※禁固以上とは「死刑」「懲役」「禁固」が該当します。 | |
⑧ | 一定の法律に違反したことで罰金の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 | |
⑨ | 暴力団員、又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 | |
⑩ | 申請者が未成年者で、その法定代理人が上記に該当する者 | |
⑪ | 法人でその役員等、又は令3条使用人が上記に該当する者 | |
⑫ | 個人でその支配人又は令3条使用人が上記に該当する者 | |
⑬ | 暴力団員等にその事業活動を支配されている者 |
フワっとしか理解できないと思いますので、それぞれポイントを押さえていきましょう。
書類の欠格要件は悪意が無くてもペナルティを受けるので注意!
まず書類に関する欠格要件を見てみましょう。
許可を受ける為に提出する申請書類や添付書類中に、嘘の記載は当然として、重要な事項の記載漏れがあった場合も欠格要件に該当します。
ここのポイントとして絶対に押さえておきたいのが、下記点です。
・記載漏れは悪意がなくてもダメ(知らなかったは通用しない)
これは書類の欠格要件で非常に怖い点です。
例えば、新規で許可を受けようとする際に、役員の一覧を提出しなければいけませんが、その中に賞罰欄という役員が過去受けた刑を記載する箇所があります。
役員の1人が過去に罰金刑を受けていたにも関わらず、それを忘れていたり、隠していた場合に、そのことを申請者が知らず賞罰欄に「賞罰なし」と記載し提出するとどうなるでしょうか?
この場合「不正な手段で許可を受けようとした」として、許可が取れないだけでなく、そこから5年間、その罰金を過去に受けていたことを黙っていた役員だけでなく、申請者や経営層含め全員が許可を取ることができなくなります。
これは建設業者にとって致命的なことですよね。
経営層に欠格要件者がいるだけであれば、許可をとる方法はいくつかあります(後ほど解説します)。
ただこの虚偽申請をしてしまうと、申請に関わった人全員が、本来許可を取れるはずであっても5年間許可がとれなくなるので、絶対にやめてください。
また最も怖い、悪意なく虚偽申請をしてしまうことを予防する方法は後ほど解説します。
人の欠格要件は対象者について細心の注意を払う
では次に人の欠格要件を見ていきましょう。
欠格要件も基本的には上記記載の通りですが、よくある事例も踏まえつつポイントを押さえていきましょう。
欠格要件の対象者は役員クラスや令3条使用人(従業員は関係なし)
欠格要件は会社の従業員全員が該当してはいけないわけではありません。
欠格要件の非該当を求められる人物は下記の通り決まっています。
・役員等※
・令3条使用人(支配人及び営業所の代表者)
執行役
業務を執行する社員
組合等の理事
顧問
相談役
総株主の議決権の100分の5以上を有する株主
※執行役員、監査役、会計参与、監事及び事務局長等は役員等には含まれません。ただし、取締役と同等以上の支配力を有する者は役職を問わず含む場合があります。
・個人事業主(申請者)
・令3条使用人(支配人及び営業所の代表者)
基本的には役員クラスの人物がこの欠格要件の条件を求められます(専任技術者は求められません)。
意外と忘れがちですが、令3条使用人も欠格要件に該当してはいけません
※令3条使用人について詳しく知りたい方はコチラの記事を参照
大きい会社になればなるほど、ケアしなければいけない人が増えることになります。
破産者は欠格要件に該当するが、多くの場合は問題にならない
では一覧の上から順に、質問が多いポイントや重要な論点を押さえていきましょう。
まず破産者は欠格要件に該当するかどうかです。
よく自己破産を過去にしたら許可をとれないと思っている方もおられますがそんなことはありません。
自己破産していても復権していれば許可は取れます。
自己破産の手続きが開始されると、破産者の様々な権利が制限されますが、その制限が解除されることを復権といいます。
個人の場合、免責(債権についての責任がなくなること)が許可されると復権します。
大抵の場合は自己破産後にすぐ免責されるケースが多いので、自己破産者でも許可をとれるケースが多いとお考え下さい。
許可取消を受ける前に廃業届を出しても廃業後5年は許可が取れない
許可の取消処分をくらった場合、その取消しがあった日から5年は許可を取ることができません(これは役員等も同じです)。
じゃあ、許可の取消しをくらう前に、廃業届出してしまって、取消しの事実を残さず、1年後くらいに新規で許可とればいいじゃん!と考える方もおられると思います。
しかしその抜け道を法は許していません。
取消処分の通知があった日(許可を取消すことが行政から事業者に通達された日)から、実際に取消処分がされるまでの間に廃業届が出された場合、その届出がされてから5年間は許可を取る事はできません。
許可取消の通知を受けたら悪いことを考えず、その取消処分が間違っていることを主張して処分を中止させる方向で動きましょう。
仮釈放は終わってから5年後、執行猶予は終われば即OK
禁固以上の刑を受けた者は、その刑を終えてから5年以上たっていないと欠格要件に該当します。
例えば、懲役5年の実刑判決を受けた場合は、5年間の服役し刑期を満了してから(刑務所から出てきてから)5年が経過している必要があります。
ではその中で、仮釈放された場合や執行猶予が付いた場合はどうなるでしょうか?
それぞれの意味から考えるとわかり易いです。
まず仮釈放ですが、仮釈放は刑期を短くする仕組みではなく、刑期中に刑務所から出られる仕組みですので、仮釈放から5年ではなく、きちんと刑期を満了してから5年経過していないと欠格要件に該当します
実刑判決を受け刑務所に服役中のものが、その刑期満了前に刑務所から仮に釈放され、一定の条件のもと社会生活を営むことが許可される刑事施策上の制度。
つぎに執行猶予ですが、執行猶予はその期間中に事件を起こさなければ、その刑が免除される仕組みなので、執行猶予期間が終われば、そこからは欠格要件にあたらず、許可を受ける事が可能になります。
刑事事件において、有罪判決を言い渡すにあたり、犯人の様々な事情に考慮し、一定期間は刑の執行を猶予し、その期間中に刑事事件を起こさなければ、刑の言い渡しを失効させる制度。
ただし、執行猶予期間中はまだ刑が免除されたわけではないため、当然欠格要件に該当し許可は取れません。
罰金刑は支払えばOKではなくその時点で欠格要件に該当
禁固以上の刑に処されていなければOKという認識があるからか、罰金刑はちゃんとお金を支払っていれば大丈夫と勘違いされている方がおられますが、罰金刑をくらっていると例え罰金を収めていても欠格要件に該当し5年間は許可をとれません。
例えば暴力事件をおこした場合です。
暴力事件の場合は、部下の態度に腹を立てて殴ったという事案でも暴行罪として罰金刑に処されるケースが当然にあります。
こういった罰金刑は禁固刑などに比べお金を払ったらお終いなのでそこまで深刻に考えていないケースもありますが、先ほど述べたように申告しなければ虚偽記載扱いになりますので十分に注意しましょう。
暴力団の場合は許可は取れません
法力団の場合は問答無用でアウトです。
暴力団を抜けていても5年以上たっていないと許可はとれません。
また申請者や役員に暴力団員がいなくても、実質的に暴力団が事業を操っているような場合も当然許可は認められません。
欠格要件に該当しない事を誓約書と公的証明書により証明が必要
建設業許可を取る為には、許可の申請者が、社内の対象者が欠格要件に該当していない事を自ら証明しなければいけない。
※後ほど解説しますが当然行政側でも調査はします。
欠格要件に該当してはいけない人物全員について(役員等や令3条使用人など上記で解説した人物)、下記①~③の書類(場合によっては④も)を提出し欠格要件に該当しない事を証明しないといけません。
※ただし「顧問、相談役及び総株主の議決権の100分の5以上を有する株主」については必要ありません。
①誓約書(様式第六号)
これは証明ではないですが、申請書類として提出しなければいけない書類です。
国によって書式が決められています。
申請者やその役員等に欠格要件該当者がいないことを誓約する書類です。
②登記されていないことの証明書
現在の後見人制度では、成年被後見人や被保佐人になればその旨が登記されます。
この「登記されていないことの証明書」とは、欠格要件のひとつである「成年被後見人や被保佐人」に該当しないことを証明するための書類です。
法務局で発行してもらうことができます。
③身分証明書
身分証明書は、成年被後見人や被保佐人、または破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨が記載された市町村の長の証明書です。
本籍地の市区町村の戸籍事務担当課で発行してもらうことができます。
④医師の診断書(特例の場合)
成年被後見人もしくは被保佐人であっても、建設業を適正に営むために必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができると認められる場合については、当該欠格事由に該当しないとされています。
そのため、もし成年被後見人や被保佐人である場合は、②の書類の代わりに、上記能力を有する旨とその根拠を記載した医師の診断書を提出します(申請日から起算して前3か月以内に発行された原本)。
この欠格要件に関連して提出する書類は以上です。
犯罪歴や暴力団関係者でないことを証明する書類は提出しません(そんなものはないので)。
ではこれらの事項にもし該当していても、言わなきゃバレないのでしょうか?
残念ながら決してそんなことはありません。
虚偽の申請は絶対にバレるのでやってはいけません!
虚偽の申請は必ずバレると思ってください。
行政はこの欠格要件に該当しないかどうか、警察等の関係各所に照会をかけて詳しく調査します。
そのため犯罪歴や暴力団関係者でないかどうかは基本的には隠せません。
万が一バレずに許可を受けたとしても、内部通告や業界内で密告などされたら、それがバレたときには許可が取消されるだけでなく、虚偽申請で5年間許可が取れなくなります。
虚偽の申請は絶対にしないようにしましょう。
虚偽申請にならないように予防策を取りましょう
ただ防ぎようのない虚偽申請もありますよね。
例えば役員の1人が5年以内に罰金刑を受けていた事を隠していた場合、申請者は気づきようがありません。
基本的に前科は厳重に管理される個人情報なので、他人の犯罪歴を一般人が確認する事は不可能です。
ではどのように予防すれば良いのでしょうか?
下記のような対策が考えられます。
5年以上の付き合いがある人物を役員に据える
少なくとも5年間付き合いがあれば、付き合いのあるうちに刑事事件等を起こしていなければOKですのでひとつの安心材料になります。
ただこれもひた隠しにされていては気が付かないケースもあるので完璧とは言えませんが。
履歴書などで確認する
では5年以上付き合いのない人物を役員に据える場合はどう予防すればよいでしょうか。
例えば、外部から優秀な人物を招聘し役員に据える際などは注意が必要です。
その場合のひとつの方法としては、過去5年の履歴書を提出してもらいましょう。
禁固刑になっていればその間は職歴がないはずですので、履歴書の職歴を確認し、その職場に確認して裏をとるなどすれば、何もしないよりは一定の予防効果が期待できます。
欠格要件該当者がいた場合は役員等から外れてもらえばOK
では役員等に欠格要件に該当する者がいた場合はどうすればよいのでしょうか?
結論から申し上げますとその人物を役員等から外すしかありません。
逆に言うと外して別の該当しない人物を役員としてたてることが出来れば、当たり前ですが欠格要件についてはクリアできます。
では外れた人物はどうすれば良いかというと、従業員として働いてもらえば良いだけです。
従業員は欠格要件に該当していてもなんら問題はありません。
例えば役員である必要がない専任技術者などになってもらい、その人材を活かすことだって可能です。
取得後に欠格要件に該当したらどうなるのか?
許可をめでたく取れた後に、役員等が欠格要件に該当した場合どうなるのでしょうか?
その場合は残念ながら許可は取消されます(建設業法第二十九条にバッチリ記載されています)。
その為、対象者は常日頃からこの欠格要件に該当しないよう自分を律して生活しなければいけません。
例えば飲酒運転で捕まったり、けんかをして暴行罪で罰金刑をくらったりした時点でアウトです。
ちょっとした不注意からも許可を取消される可能性があることを、特に大きい会社になればなるほど全ての役員に意識させることが非常に重要です。
建設業許可の欠格要件についてまとめ
建設業許可を取る為には、欠格要件に該当していない事が必要です。
欠格要件はいくつ項目かありますが、主な所で言うと、会社の役員クラスや令3条使用人が過去5年間に懲役や罰金刑を受けていないことや、暴力団に所属していない事などが求められます。
この欠格要件に該当しているにも関わらず、該当していないとして許可を申請すると、虚偽申請として許可を5年間取れないペナルティを受けるので注意しましょう。
また許可取得後に、役員などがこの欠格要件に該当してしまうと、許可が取り消されてしまうのでその点も注意しましょう。
なお、この欠格要件と似た条件として「誠実性」があります。
欠格要件が問題にならなければ、この「誠実性」も問題になる事はめったにありませんが、念の為そちらも確認しておきましょう。
建設業許可を取る為には誠実性がないといけません。 「誠実性って言われても具体的にどうすれば良いの?」 そんな疑問やお悩みをお持ちではありませんか? この記事を読めば・・・! ・建設業許可の誠実性について求められる事が具体[…]
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