「建設業許可を取る為には500万円以上の資金をもっていないとダメ」
こんな話を聞いたことがあるんではないでしょうか?許可の取る為には、一定の資金力が求められます。本記事では建設業許可を取る為に必要な資金条件についてどこよりも詳しく解説していきます。
本記事のポイント
許可取得には500万円以上の資金力が必要
証明方法は口座残高か資本金額の提示
許可取得後の金額維持は不要(例外有)
建設業許可は500万円の資金力証明が必須
建設業許可を取る為には、一定以上の資金力(この事を建設業法上「財産的基礎等」といいます)が必要となります。その一定以上の資金力は500万円です。500万円以上の資金力を証明できれば、許可の金銭面での条件はクリアできます。この500万円以上の資金力を証明する為の方法は以下の3つです。
・自己資本500万円以上を証明(決算書など
ではこの2つの証明方法を詳しく見ていきましょう。
勘違いしやすいポイントですが、500万円を支払う必要はありません!あくまでも500万円以上の資金力がある事が求められるだけです。ただ建設業許可を取る為には別途費用はかかりますので、それについては「建設牛許可を取る為に必要な費用について」を参考にして下さい。
500万円以上の残高証明書の提示
まず方法のひとつ目としては、銀行口座に500万円以上用意すればそれでOKです。500万円以上口座にある状態で銀行に預金残高証明書を発行してもらい、それを申請書類と一緒に提出します。これが一番簡単な方法です。預金通帳の写しではダメな自治体が多く、原則金融機関が発行する残高証明書が必要です(発行に数営業日かかる場合もありますので余裕をもって取得しましょう)。
1ヶ月以内や4週間以内に発行された証明書を求められる自治体が多いので早く発行しすぎないようにしましょう。
いわゆる見せ金でもOKなんですか?
500万円もっていない場合、許可を取るために一時的にお金を借りて、500万円あるように見せかけるいわゆる「見せ金」は通用するのでしょうか?結論から言えばまったく問題ないです。
口座の500万円が、いつどこから振り込まれたのかは確認されませんし、そもそも問題にされません。これにはちゃんと理由があって、この500万円という条件はガイドラインでの規定上「調達できる能力」として証明できればOKなんです。つまり、500万円をどういった手段であれ調達できるのであれば、許可を受けるにふさわしいと見なされるわけです。
見せ金であろうがお金を借りてこれている事実にかわりはないので、まったく問題にならないわけです。
自己資本500万円以上を証明する方法
証明方法として簡単なのは先ほど解説した残高証明書を使用する方法ですが、もう一つの方法として決算書や確定申告書によって自己資本500万円以上を証明してもOKです。法人を設立してすぐに許可の申請をする場合はコチラの方が簡単なケースもあります。
この自己資本500万円以上の証明方法は法人と個人でそれぞれ以下のような方法になります。
貸借対照表における純資産の額(設立後すぐの場合は資本金額)
貸借対照表における期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に、負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額
どちらの場合も、上記の金額が500万円以上あればOKです。
自己資本500万円以上を証明する為の必要書類
今ご紹介した方法で、自己資本500万円以上を証明するために必要な確認書類は以下のようになります。
新設法人の場合 (決算未経験) | 創業時の財務諸表(開始貸借対照表) |
新設個人の場合 (決算未経験) | 原則、残高証明書により証明 |
法人の場合 | 申請時直前の決算期における財務諸表 |
申請時直前の決算期における確定申告書のうち、税務署の受付印のある別表一+決算報告書 ※税務署の受付印または税務署の受信通知(電子申告の場合)を必ず確認 | |
個人の場合 | 申請時直前の決算期における財務諸表 |
申請時直前の決算期における確定申告書のうち、 税務署の受付印のある第一表+第二表+青色申告決算書又は収支内訳書+貸借対照表 ※税務署の受付印または税務署の受信通知(電子申告の場合)を必ず確認 |
許可の更新時は証明の必要なし(例外有)
この資金力証明は許可の新規申請時に必要なだけで、許可の更新時には必要有りません。これは、建設業許可業者として5年間の営業実績があれば、十分な資金力を備えた業者であると認めて良いというルールがあるためです(ただし特定建設業許可の場合は更新時も資金力証明が必要)。
なお、過去に許可を持っていた場合で、新たに許可を新規申請して取り直す場合は、残高証明書や自己資本による証明が必要になります。
特定建設業許可の場合は500万円ではダメ!
今までご紹介した条件は一般建設業許可の場合で、実は特定建設業許可を取る場合には更に厳しい資金力証明を求められます。許可を検討される方の9割は一般建設業許可だと思いますので、問題にはなるケースはまれだと思いますが、「特定建設業許可を取りたい!」という方は注意が必要です。
特定建設業許可を取る為には、下記の4つの条件をすべて満たさなければいけません。
②流動比率が75%以上である
③資本金の額が2,000万円以上ある
④自己資本の額が4,000万円以上ある
ではこちらもひとつずつ見ていきましょう(なお、特定建設業許可について詳しく知りたい方は「特定建設業許可とは?」を参照下さい)。
①欠損の額が資本金の額の20%を超えていない
欠損の額とは、法人と個人で定義が異なります。
貸借対照表の繰越利益剰余金が負である場合にその額が資本剰余金、利益準備金及び任意積立金の合計額を上回る額
貸借対照表の事業主損失が事業主借勘定から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額を上回る額
欠損が無いか、あってもその額が資本金の20%以下であればOKです。赤字が続いている場合などは注意が必要です。
②流動比率が75%以上である
流動比率とは、流動資産を流動負債で割った数値を百分率(%のこと)で表したものをいいます。これが75%以上ある事が必要です。現金や預金額より、借り入れの方が多い場合は注意が必要です。
③資本金の額が2,000万円以上ある
資本金が2,000万円以上である必要があります。法人の場合で満たしていない場合は資本金を増資しなければいけません。また個人の場合は期首資本金が2,000万円以上必要です。なお、申請時の直前の決算時に資本金が2,000万円以下であっても、申請時までに増資を行えば本条件はOKとなります(ただし次の自己資本4,000万円以上は直前期の決算書上でのクリアが必要)。
④自己資本の額が4,000万円以上あること
自己資本は一般建設業の場合でも出てきた要件ですが、一般の場合は500万円以上でしたから、特定の場合は8倍以上の条件を求められます。簡単に言うと純資産が4,000万円以上必要になるという事ですので、利益をしっかり出している業者さんでないと難しくなります(設立後すぐ特定を取りたい場合は、資本金を4,000万円以上にしなければなりません)。
建設業許可を取った後は500万円を維持する必要はない
無事建設業許可を取得した後、この資金力の条件は維持する必要がありません。資金力の条件はあくまで許可を取る為に必要な条件であり、維持する為の条件ではないからです。そのため、許可取得後に例えば自己資金が500万円以下になった場合でも、それを理由に許可が取り消されることはありません。
ただし特定建設業許可の場合は注意しましょう
特定建設業の場合も一般の場合と同じで、許可取得後に財産的基礎の要件を下回ってもそれを理由にただちに許可が取り消されることはありません。ただし、特定建設業の場合は、更新のたびに資金力について審査されます。そのため、更新時には上記で説明した厳しい資金力の条件を満たしている必要があるのです。
いずれにせよ、一般の場合も特定の場合も、常にこの資金力の条件を維持していなければいけないわけではありません。なお、このことは下記の通りガイドラインでもきちんと定められています。
本号の基準に適合するか否かは当該許可を行う際に判断するものであり、許可をした後にこの基準を適合しないこととなっても直ちに当該許可の効力に影響を及ぼすものではない。
許可取得に必要な資金力証明書類一覧
ではここまでご紹介した許可を取る為の資金力証明方法とその確認書類をまとめると以下のようになります。
資金力証明および確認書類 | ||
許可区分 | 証明方法 | 確認書類 |
一般建設業 | 自己資本500万円以上 | 新設法人:A 新設個人:D 1期終了法人:B 1期終了個人:C |
500万円以上の資金調達能力 | D | |
許可取得後5年間の営業実績 ※更新時に適用 | 特に必要なし | |
特定建設業 | ①欠損額が資本金の20%以下 ②流動比率が75%以上 ③資本金が2,000万円以上 ④自己資本が4,000万円以上 | 新設法人:A 新設個人:不可 1期終了法人:C 1期終了個人:D |
※財産的基礎の必要要件
一般建設業の場合:どれかひとつでOK
特定建設業の場合:①~④すべて必要
パターン | 必要書類 |
A | 創業時の財務諸表(開始貸借対照表) |
B | 申請時直前の決算期における ・財務諸表 ・確定申告書のうち、税務署の受付印のある別表一+決算報告書 |
C | 申請時直前の決算期における ・財務諸表 ・確定申告書のうち、税務署の受付印のある第一表+第二表+青色申告決算書又は収支内訳書+貸借対照表 |
D | 金融機関が発行する500万円以上の預金残高証明書 ※申請日前4週間(28日)以内のもの |
【補足】これらの資金力を業法上は財産的基礎等と言います
本記事でここまでご紹介した、建設業許可を取る為の資金力条件の事を、建設業法的には「財産的基礎等」といいます。各都道府県の手引きなどではこの「財産的基礎等」という表現が使われているかもしれませんので知っておいて頂けると混乱が無いかと思います。建設業法の中で明記されている箇所を参考に載せておきます。
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。(中略)
請負契約(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。
建設業許可は500万円持っていないと取れないのか?まとめ
以上、ここまで建設業許可を取る為に必要な、500万円以上の資金力証明についてご紹介してきました。
お金の事でもあり、許可を取りたい方が一番気にされることかもしれませんが、ほかの許可条件と比較するとここがダメで許可が取れないというケースはあまり多くありません。求められる条件や書類をしっかり理解し準備をすれば問題ないことが多いので余裕を持った準備を進めていきましょう。
建設業許可についてもっと詳しく知りたい方は