建設業許可は知事許可と大臣許可の2種類があり、どちらを取るべきかは会社の実態によって異なります。
「どちらを選べばよいのかな?・・・」
そんなお悩みをお持ちの方に、本記事では知事許可について、大臣許可との違いに触れながら詳しく紹介していきます。
本記事のポイント
知事許可は同一県内にのみ営業所がある業者が申請
知事許可も大臣許可も許可条件は同じ
知事許可でも全国の工事を受注可能
建設業許可の知事許可について
建設業許可の知事許可とは、許可権者(許可を承認し与える人)が各都道府県の知事である許可の事を指します。
許可を持っている業者のほとんどがこの知事許可を持っています(許可業者全体の90%以上が知事許可)。
ですので、建設業許可を取りたい場合は、基本的には、その建設業を営んでいる都道府県の知事に対して許可を申請し、知事から許可をもらうと覚えておけばOKです。
例えば、「東京都内で塗装工事業を営んでいる個人事業主」は、東京都知事に許可を申請し、都知事から許可をもらう事になります。
ポイントは同一の都道府県内にのみ営業所を設けている事
例えば「本店も支店も大阪府にしかありません!」という業者は大阪府知事許可を申請します。
知事許可
1つの都道府県の区域内のみに営業所を設けて営業しようとする場合
大臣許可
2つ以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合
建設業許可を承認し与える事が出来るのは、都道府県の知事か、国土交通大臣のどちらかだけです。
知事許可と大臣許可は同時に取得出来ない
同じ業者が知事許可と大臣許可をどちらも申請・取得する事はできません。
例えば、東京都内にしか営業所が無い業者が、大臣許可を申請することは出来ません(知事許可しか申請できない)。
逆も同じで、東京都と千葉県に営業所がある業者が、知事許可を申請する事はできません(大臣許可しか申請できない)。
なお、これらは建設業法に下記のように記載されています。
建設業を営もうとする者は、(中略)二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。
知事許可の申請先は各都道府県庁にある窓口
知事許可の申請をするには、必要な申請書類を作成し申請窓口に提出すればOKです。
申請窓口は、各都道府県の県庁にある担当部署(下記一覧参照)になります。
※大臣許可の申請窓口は県庁ではなく、各エリアの地方整備局が申請窓口になります。
知事許可・申請窓口一覧 | |||
都道府県名 | 担当部署 | 都道府県名 | 担当部署 |
北海道 | 建設部建設政策局建設管理課 | 滋賀県 | 土木交通部監理課 |
青森県 | 県土整備部監理課 | 京都府 | 建設交通部指導検査課 |
岩手県 | 県土整備部建設技術振興課 | 大阪府 | 住宅まちづくり部建築振興課 |
宮城県 | 土木部事業管理課 | 兵庫県 | 県土整備部県土企画局総務課建設業室 |
秋田県 | 建設部建設政策課 | 奈良県 | 県土マネジメント部建設業・契約管理課 |
山形県 | 県土整備部建設企画課 | 和歌山県 | 県土整備部県土整備政策局技術調査課 |
福島県 | 土木部技術管理課建設産業室 | 鳥取県 | 県土整備部県土総務課 |
茨城県 | 土木部監理課 | 島根県 | 土木部土木総務課建設産業対策室 |
栃木県 | 県土整備部監理課 | 岡山県 | 土木部監理課建設業班 |
群馬県 | 県土整備部建設企画課 | 広島県 | 土木建築局建設産業課建設業グループ |
埼玉県 | 県土整備部建設管理課 | 山口県 | 土木建築部監理課建設業班 |
千葉県 | 県土整備部建設・不動産業課建設業班 | 徳島県 | 県土整備部建設管理課 |
東京都 | 都市整備局市街地建築部建設業課 | 香川県 | 土木部土木監理課契約・建設業グループ |
神奈川県 | 県土整備局事業管理部建設業課 | 愛媛県 | 土木部土木管理局土木管理課 |
新潟県 | 土木部監理課建設業室 | 高知県 | 土木部土木政策課 |
山梨県 | 県土整備部県土整備総務課建設業対策室 | 福岡県 | 建築都市部建築指導課 |
長野県 | 建設部建設政策課建設業係 | 佐賀県 | 県土整備部建設・技術課 |
富山県 | 土木部建設技術企画課 | 長崎県 | 土木部監理課 |
石川県 | 土木部監理課建設業振興グループ | 熊本県 | 土木部監理課 |
岐阜県 | 県土整備部技術検査課 | 大分県 | 土木建築部土木建築企画課 |
静岡県 | 交通基盤部建設業課 | 宮崎県 | 県土整備部管理課 |
愛知県 | 都市整備局都市基盤部都市総務課 | 鹿児島県 | 土木部監理課 |
三重県 | 県土整備部建設業課 | 沖縄県 | 土木建築部技術・建設業課 |
福井県 | 土木部土木管理課 | - | - |
知事許可の申請手数料について
知事許可の申請をするには、申請手数料がかかります。
費用は下記の通りで、新規申請は9万円、業種の追加や更新は5万円です。
これは1回の申請にかかる費用ですので、1回の申請で複数業種の新規申請をしても、申請手数料は9万円でOKです。
手数料の支払いは、9万円分の収入印紙を購入し(各県庁に購入窓口があります)、その収入印紙を申請書類に貼り付けるケースが多いです(都道府県により現金支払いの場合もあり)。
申請区分 | 知事許可 | 大臣許可 |
新規 | 9万円 | 15万円 |
許可換え新規 | 9万円 | 15万円 |
般・特新規 | 9万円 | 15万円 |
業種追加 | 5万円 | 5万円 |
更新 | 5万円 | 5万円 |
知事許可の審査期間について
知事許可は申請してから許可がおりるまでの審査期間におおよそ30日~45日かかります(都道府県によって異なる)。
申請すればすぐに許可がとれるわけではないので注意しましょう。
大臣許可と手数料および審査期間を比較してみます。
手数料 (新規) | 審査期間 (目安) | |
知事許可 | 9万円 | 30日~45日 |
大臣許可 | 15万円 | 120日 |
知事許可の方が安価にかつ早く許可が取れる事がわかります。
許可を取る際に、営業所が都道府県をまたいで存在する場合、将来的な全国展開を考えていないのであれば、ひとつの県に集約して知事許可を申請する事を検討しても良いかもしれません。
損しない為に!知事許可でよくある勘違い
知事許可で本当に多い勘違いをご紹介します。
受注出来たはずの工事を取りこぼさないようしっかり覚えておきましょう。
知事許可で良くある勘違い
・県外の工事は受注出来ない
・大臣許可より請け負える工事の規模が小さい
▶ どちらも間違いです!
全国どこの工事でも請け負えます
許可を受けた県以外の工事についても何の問題もなく請け負えます
例えば東京都内にしか営業所を持たず、東京都から知事許可を受けた業者でも、千葉県や神奈川県の建設工事を請け負うことは可能です。
請負える工事の条件も同じ
知事許可と大臣許可でそれぞれ請け負える工事の規模や条件が違うというのも誤りです。
※それに紐づいて手数料や審査期間が異なるだけ
【補足】営業所の定義について
知事許可と大臣許可の定義で出てくる「営業所」について紹介しておきます。
建設工事の請負や見積もり、入札業務など、工事に関する実務を行っている事務所
注意点① 軽微な工事のみを請け負う場合も営業所に該当
その事務所で請け負う工事が、許可不要な軽微な工事(500万円未満の工事)だとしても、営業所に該当します。
例えば、大阪の本店では500万円以上の工事を請け負うが、京都の支店は500万円未満の工事(軽微な工事)しか請け負わない場合でも、そこで工事の請負業務をしている以上は、京都の支店も立派な営業所として位置づけられます。
つまりこのケースでは、大臣許可が必要という事になります。
注意点② 建設業務をしない事務所は営業所に該当しない
請負契約など建設業の実務を行わない事務所は、建設業法上の営業所には該当しません。
・単なる現場事務所や連絡所、物置場
・経理や総務しかいない事務所
※登記上の本店でも営業所には該当せず
例えば、大阪に建設業務を営む事務所を構えており、京都に総務部と経理部だけの支店がある場合、京都支店は建設業法上の営業所には該当しません。
つまりこのケースでは、知事許可が必要という事になります。
建設業法上の営業所の定義を正しく理解した上で、取るべき許可を正しく判断できるようにしましょう。
まとめ
以上、ここまで知事許可についてご紹介しました。
実は建設業許可を持っている事業者の90%以上が知事許可の保有者と言われています。
許可取得を考えている方の多くがこの知事許可を申請することになりますので、その中身をしっかり理解していて損はないと思います。
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