主任技術者と監理技術者とは?知らなきゃヤバイ配置義務も解説

建設業許可を持っている業者は、請け負う現場に「主任技術者」と「管理技術者」を配置する義務があります。

これは守らなければ建設業法違反となりますので、正しく制度を理解する必要があります。

本記事では主任技術者と監理技術者について知らないとヤバいポイントを詳しくご紹介していきます。

※2020年10月から施工される改正建設業法に則り記載した最新情報です

本記事のポイント


 主任技術者と監理技術者の配置は建設業者の義務

 両者は専任技術者の要件を満たしている必要あり

 現場に専任な場合と兼務が認められる場合あり


主任技術者と監理技術者とは

主任技術者と監理技術者とは、建設業許可業者が請負った現場に必ず配置しなければいけない従業員の事です。

主任技術者
請負った全ての工事の現場に配置しなければいけない

監理技術者
特定建設業許可が必要な工事の現場に、その工事を発注者から請け負った元請業者が配置しなければいけない
※その場合、元請業者は主任技術者の配置不要

つまり、建設業者が工事を請けえば必ず現場に主任技術者を置かないといけませんが、特定建設業許可が必要な工事を請け負う元請業者に関しては主任技術者に代えて監理技術者を現場に置かないといけません。

 特定建設業許可って何だっけ?

主任技術者と監理技術者の根拠条文を載せておきます。

建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、(中略)工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。
(中略)
発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、(中略)建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。

引用:e-Gov法令検索 建設業法第二十六条

注意!500万円未満の工事でも配置義務あり

上記の条文で、「建設業者は」と規定されているため、許可を持っている業者は、500万円未満の軽微な工事にも主任技術者を配置しなければいけません

一方で、許可を持っていない業者は配置する必要はありません。

主任技術者と監理技術者は何をする人?

主任技術者と監理技術者は、現場で施工技術上の管理をつかさどる者として配置されます。法律では以下のように記載されています。

主任技術者及び監理技術者は、工事現場における建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督の職務を誠実に行わなければならない。

工事現場における建設工事の施工に従事する者は、主任技術者又は監理技術者がその職務として行う指導に従わなければならない。

引用:e-Gov法令検索 建設業法第二十六条

両者は現場で施工計画を立て、計画通り工事が進むよう工程面や技術面などあらゆる面で現場を指導・監督する為に置かれます。
※なお、主任技術者や監理技術者の配置は原則1名が望ましいとされています

ここまでの説明で、主任技術者と監理技術者は、工事を請け負った建設業者が絶対に現場に置かないといけない工事の指導監督をする従業員という事はご理解いただけたでしょうか。

ではこの主任技術者と監理技術者は会社の従業員であれば誰でもなれることが出来るのでしょうか?

主任技術者と監理技術者になる為の要件

主任技術者と監理技術者は、現場を監督できる人物でないといけないため、専任技術者と同等の能力が求められます

主任技術者の要件
一般建設業の専任技術者の要件と同じ

監理技術者の要件
特定建設業の専任技術者の要件と同じ

専任技術者と同じという事は「国家資格等の保有」か「実務経験10年以上(指定の学歴があれば3年や5年に短縮可能)」のどちらかの条件を満たしていないといけないという事になります(監理技術者だとさらに厳しい条件が求められる)。もっと詳しく知りたい方は下記のページを参照下さい。

 専任技術者の要件をもっと詳しく知りたい方はコチラ

「えっ・・・?」と思われた方もおられるのではないでしょうか?

専任技術者の要件を満たすような方は大きな会社で無い限り社内に大勢いるわけではありません。社内に1人しかいないという事業者も大勢いるはずです。しかし専任技術者が実際に現場にでて主任技術者になる事は可能かというと、それも原則禁止されています(後ほど詳しくご説明します)。

主任技術者や監理技術者は正社員でないといけない

主任技術者や監理技術者は、工事を請け負う建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある従業員でないといけません(監理技術者制度運用マニュアル)。簡単に言うと、正社員じゃないとダメですよと覚えておけばOKです。

直接的な雇用関係
工事を請け負う建設業者に直接雇われている事が必要です。
つまり出向者や派遣社員は認められません。

恒常的な雇用関係
公共工事において、その現場に配置される専任の主任技術者や管理技術者は、入札の申込みのあった日以前に3か月以上の雇用関係が必要です。つまり、その工事の為だけに雇った技術者は認められません。

なお、民間工事についても同様の規定を設けている場合がありますので注意しましょう。

専任技術者との兼務は原則禁止

専任技術者が主任技術者や監理技術者を兼務する事は原則できません

専任技術者の役割は、「建設工事の請負契約を結ぶにあたり、技術的なサポート(工法の検討、注文者への技術的な説明、見積り等)を行う事」であり、常に営業所に勤務している事が予定されています。
一方で主任技術者や監理技術者は先ほど説明した通り現場に置かれる人物です。

この勤務している場所が「専任技術者」と「主任技術者や監理技術者」では異なる為、専任技術者が主任技術者や監理技術者を兼務する事はできないのです。

しかしそうなると、専任技術者要件を満たした人物が社内に1名しかいない事業者(1人親方などはまさにそうです)は工事を受けられないという事態が発生してしまいます。そうなっては困りますので、専任技術者が主任技術者や監理技術者を兼務できる例外のケースが設けられています。

専任技術者が兼務できる例外のケース

下記①~③の条件をすべて満たしている場合は、専任技術者が主任技術者や監理技術者を兼務できます。

専任技術者が兼務可能な条件
①専任技術者が勤務する営業所で締結された工事
②営業所と現場の距離が近い
※現場の職務も営業所の職務もできる距離、かつ営業所と現場間で常時連絡がとれる体制
③専任である事が求められる工事以外の工事

この中で①と②はなんとなく理解いただけると思いますが、③がわかりにくいですね。

③の専任である事が求められる工事とは、以下のような工事で、これに該当すると主任技術者や監理技術者は他の現場に係る職務を兼務してはいけません(監理技術者制度運用マニュアル)。

専任である事が求められる工事
公共性の高い工事(個人の戸建て住宅の工事以外のほとんどの工事)で、請負代金の額が3,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上の工事

話を少し戻しますと、この工事に該当しない工事で、かつ現場と営業所の距離が近い場合は、専任技術者が主任技術者や監理技術者を兼務する事ができるのです。

主任技術者や監理技術者の複数現場の兼務について

主任技術者や監理技術者は他の現場の主任技術者や監理技術者を兼務する事が可能か見ていきましょう。

例としてK会社が請け負っている工事Aと工事Bの各現場において、従業員Cがその両方の現場の主任技術者などを兼務できるか考えましょう。

①両工事とも専任である事が求められる工事ではない場合

この場合は、主任技術者も監理技術者も兼務可能です。
例で言うと、工事A,Bのどちらも専任である事が求められない場合、従業員Cは両現場の主任技術者や監理技術者を兼務できます。

②一方もしくは両工事とも専任である事が求められる工事

この場合、原則として主任技術者も監理技術者も兼務する事は出来ません。
しかし例外として、以下のケースはそれぞれ兼務が認められます。

主任技術者の兼務を認められるケース
2つ以上の現場が
ア.密接な関係にある事

イ.同一の建設業者が請け負っている事
ウ.同一の場所又は近接した場所で行う事
※全て満たす必要がある

イの意味はわかると思いますが、アとウの定義は下記の通り決められています。

ア.密接な関係にある工事とは
「工事の対象となる工作物に一体性若しくは連続性が認められる工事」又は「施工にあたり相互に調整を要する工事」のこと指します(監理技術者制度運用マニュアル)。

・2つの現場の資材を一括で調達し相互に工程調整を要するもの
・工事の相当の部分を同一の下請け業者で施工し相互に工程調整を要するもの

ウ.近接した場所とは
工事現場の相互の間隔が 10km 程度のことを指します(監理技術者制度運用マニュアル)。

これらに該当すれば専任の主任研究員でも他の現場を兼務できます。上記の例でいうと、工事A,Bがそれぞれある交差点で交わっているような国道と市道の舗装工事で、どちらもその交差点付近で行われいるような場合は、従業員Cは両現場の主任技術者を兼務できます。

ただこの場合に兼務できるのは主任技術者のみで、監理技術者の兼務可能なケースは以下の通り別で用意されています。

監理技術者の兼務を認められるケース
2つ以上の現場が
ア.工期が重複、かつ工作物に一体性有

イ.特例監理技術者と補佐を置く場合
※どちらかに該当すればOK

 ア.工期が重複し、かつ工作物に一体性がある

契約工期の重複する複数の工事で、それぞれの工事の対象となる工作物に一体性が認められるもの(監理技術者制度運用マニュアル)であれば、それらの現場で監理技術者の兼務が認められます。
※当初の請負契約以外の請負契約が随意契約(入札ではない任意の契約)により締結される場合に限る

上記の例で言えば、工事AとBがどちらも同じ巨大施設Zに関する工事で、工期も重複している場合は、従業員Cは両現場の監理技術者を兼務する事が可能です。
※このケースは主任技術者の兼務も可能です。

イ.特例監理技術者と補佐を置く場合

このケースは2020年10月から施行される改正建設業法であたらしく設けられた制度です。

これは、現場に監理技術者補佐を専任で置いた場合に、監理技術者が他の現場を兼務できるとした制度です。補佐を置くことで複数の現場を兼務する監理技術者の事を「特例監理技術者」と呼びます。この監理技術者補佐は、特例監理技術者が兼務する現場ごとに専任で置く必要があります。
※なお、1人の特例監理技術者が兼務できる現場の数は2つまでです。

監理技術者補佐の要件
①監理技術者の要件を満たす者
②主任技術者の要件を満たす者のうち一級の技術検定の第一次検定に合格した者(技士補)

①か②のどちらかであればOKです。②が今回の改正で緩和されたポイントになります。

技術検定は第一次検定と第二次検定にわけられ両方合格したものを技士として認定しますが、第一次検定のみ合格した者には、技士補の資格が与えれます。つまり、特例監理技術者は一級技士の資格が必要ですが、監理技術者補佐は技士補の資格でもなれる事になります。

その為、監理技術者の要件を満たした人物が1名しか社内にいなくても、技士補が他にいることで、今後は複数の現場を監理技術者として兼務する事が可能になりました。

上記例でいうと、工事A,Bにそれぞれ監理技術者補佐として技士補の資格者である従業員EとFを置いた場合、従業員Cは特例監理技術者として両現場を兼務する事が可能になります。

専任が求められる現場の監理技術者の注意点

専任が求められる現場の監理技術者は、管理技術者資格者証の交付、かつ監理技術者講習を修了していることが必要になります。また現場で監理技術者証の携帯が義務付けられ、発注者の請求があれば提示しなければいけません。

監理技術者証の交付は一般社団法人建設業技術者センターが実施しております。
一般社団法人建設業技術者センターHP

監理技術者講習は下記機関が実施ていますので講習を受けて修了証を手に入れましょう。

一般財団法人 全国建設研修センター
一般財団法人 建設振興基金
一般社団法人 全国土木施工管理技士会
株式会社   総合資格
株式会社   日建学院
公益社団法人 日本建築士会連合会
国土交通省 監理技術者講習実施機関一覧

上記規定は下記の通り建設業法で決められていますので必ず守りましょう。

前項の規定により専任の者でなければならない監理技術者は、第二十七条の十八第一項の規定による監理技術者資格者証の交付を受けている者であつて、第二十六条の四から第二十六条の六までの規定により国土交通大臣の登録を受けた講習を受講したもののうちから、これを選任しなければならない。

前項の規定により選任された監理技術者は、発注者から請求があつたときは、監理技術者資格者証を提示しなければならない。

引用e-Gov法令検索 建設業法第二十六条

下請け主任技術者の配置免除

下請け主任技術者の配置免除の制度が、2020年10月の改正建設業から設けられました

主任技術者の配置は原則全ての工事現場に義務付けられており、建設業者の負担が大きかったため今回の制度が新設されました。

主任技術者の配置が免除される条件

①鉄筋工事又は型枠工事
②下請代金の合計が3,500万円未満
③元請が配置する主任技術者が1年以上の指導監督的実務経験があり、かつ当該現場に専任
④免除される下請け業者の再下請禁止
⑤配置免除について注文者⇔元請⇔下請で書面の承諾

上記①~⑤を全て満たしている場合に、下請け業者は主任技術者を配置する義務が免除されます。これらを図解すると以下のようになります。

directer-1

主任技術者や監理技術者と現場代理人の兼務

同じく工事の現場に配置される技術者としては現場代理人がいますが、この現場代理人と主任技術者は兼務できるのでしょうか?結論、現場代理人と主任技術者や監理技術者は同じ現場であれば兼務可能です(公共工事標準請負契約約款第十条)。

つまり、ある現場の主任技術者をその現場の現場代理人が兼ねることは問題ないということです。

そもそも現場代理人は公共工事において配置が義務付けられる技術者の事で、建設業法で配置が義務付けられているわけではなく、公共工事の請負契約の中で規定されています。そのため、主任技術者や監理技術者とはそもそも置かれる根拠が異なり、また現場代理人は資格要件も無いため、現場を請負う業者の社員であれば誰でもなる事が原則可能です。

 現場代理人についてもっと詳しく知りたい方はコチラ

まとめ

以上、ここまで主任技術者と監理技術者についてご紹介しました。

どちらも建設業許可を持っている業者は工事現場に必ず配置しなければなりません。専任を求められるケースにもかかわらず、他の現場を同一人物が兼務してしまっていた、というケースは良くありますが、これは建設業法違反になりますので絶対にないようにしましょう。

ルールをうまく使いながら、法律を遵守した上で効率よく工事を請け負う事が大切です。

kyoka-2