技能実習生を受け入れたい建設業社や監理団体の皆様に向けて、技能実習計画の認定までの手順をわかりやすく解説します。技能実習生を受け入れる為の最初の手続きといっても過言ではない技能実習計画の認定申請。初めての方には非常に大変な作業ですが、全体像を把握すれば作業のイメージもわきやすいので、ぜひ参考にしてみて下さい。
技能実習計画の認定申請とは?
技能実習生の受け入れ企業は、受け入れようとする技能実習生ごとに技能実習計画を作成(団体監理型の場合には、監理団体の指導に基づいて作成)し、外国人技能実習機構(OTIT)から認定を受ける必要があります。このことを技能実習計画の認定申請といいます。この技能実習計画は技能実習1号、2号、3号のそれぞれの段階ごとに作成が必要で、この認定を受けない限り技能実習生を受け入れることはできない非常に大切な手続きになります。
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技能実習計画の認定までの手順
技能実習計画の認定申請の流れは大きくわけると以下の3つのフローに分けられます。
①技能実習計画認定申請書の作成
②申請書類一式を外国人技能実習機構に提出
③機構での審査を経て認定通知書の交付
なお、技能実習計画の認定は、受け入れたい技能実習生が決定していることが前提となりますので、受け入れ予定の技能実習生がまだ決まっていない場合は、先に監理団体を通じて候補者の面談や採用活動をしましょう。
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①技能実習計画認定申請書の作成
まずは技能実習計画認定申請書を作成します。申請書の様式は決められており、外国人技能実習機構のホームページからダウンロードする事が可能です。申請書は第一面から第七面まであり、実施する技能実習の概要(職種や期間、目標とする技能レベルから、実習生や実施機関、監理団体などの情報まで)や具体的なスケジュール、また入国前と入国後に実施する講習の具体的なスケジュールなど、細かく実施する実習内容を記載します。
団体監理型の場合は、監理団体の指導い基づいて受入れ企業が作成します。書き方になれるまでは非常に時間がかかる作業になるため余裕をもって取り掛かることをお勧めします。
②申請書類一式を外国人技能実習機構に提出
技能実習計画認定申請書の作成が完了したら、それらを必要な添付書類と合わせて外国人技能実習機構に提出します。添付書類は認定基準をクリアしていることを証明する為の求められる書類で、計画認定申請書を合わせるとかなりのボリュームになります(50枚~100枚程度の書類の束、場合によってはそれ以上)。様式が決まっているものもあり、それらは外国人技能実習機構のホームページからダウンロードできます。
申請の受付は技能実習開始の6カ月前から可能で、必ず4カ月前までに申請を行わなければなりません。とくに初めて受け入れを行う企業の場合は、提出が必要な書類が非常に多くなりますので、早め早めの準備を心がけましょう。
③機構での審査を経て認定通知書の交付
申請書類を提出し機構に受理されてから1~2ヶ月の審査機関を経て認定通知書が監理団体に交付されます。審査の結果、不認定とする場合もその旨の通知書が交付されます。この認定通知書は技能実習生の在留資格申請の際に必要になりますので大切に保管するようにしましょう。
認定通知書の見本(実際は認定した内容が記載されています)
技能実習計画の認定基準
技能実習計画は提出すれば必ず認定されるわけではなく、下記の認定基準をクリアしていなければ認められません。この認定基準は言い換えると技能実習生を受け入れて実習を実施しようとする受入れ企業およびその関係者に課せられる基準であり、これらの基準をクリアしていることを証明するための書類が技能実習計画認定申請書類ということになります。
- 修得させる技能が技能実習生の本国で修得困難である事
- 技能実習の目標が適切である事(実技試験への合格)
- 技能実習の内容が適切である事※1
- 実習期間が適切である事(1号は1年以内、2、3号は2年以内)
- 前段階の試験合格等の目標が達成されていること(2,3号の場合)
- 技能検定・技能実習評価試験等により適切な評価を行う事
- 事業所ごとに実習責任者等を選任している事※2
- 団体監理型の場合、申請者が監理団体の実習監理を受ける事
- 技能実習生の待遇が適切である事(報酬が日本人従事者と同等以上)
- 許可を受けている監理団体による監理を受ける事
- 技能実習3号の場合、申請者の実習実施能力が省令基準を満たしている事
- 技能実習生の人数が適切である事※3
※1.技能実習の内容が適切である事
技能実習は受け入れが可能な職種が決まっており2021年7月時点では85職種156作業が認められています。その中で、2号3号と移行していくためには必ず実施しなければならない業務が156作業毎に決められています。「必須業務」に指定されている業務は実習全体の1/2以上実施し、「関連業務」に指定されている業務は全体の1/2以下、「周辺業務」に指定されている業務は全体の1/3以下に設定しなければなりません。これらの業務が適切に実習計画に反映されていなければ実習計画は認定されませんので注意しましょう。
※厚生労働省のホームページで各作業における認定基準が公開されています
例】型枠施工職種(型枠工事作業)の認定基準(必須業務など)
※2.事業所ごとに実習責任者等を選任している事
技能実習を実施する事業所ごとに受入れ企業は「実習責任者」を選任しなければいけません。この実習責任者になるには国際人材協力機構(JITCO)の講習を受講する必要があります。また、実際に実習生に技能指導を行う実習指導員や、実習生の生活面の管理サポートを行う生活指導員も選任する義務があり、実習責任者はそれらの指導員を監理し、技能実習全体を統括する役目を担います(これらの担当は兼務も可能です)。
※3.技能実習生の人数が適切である事
技能実習生は受け入れ可能な人数が受け入れ企業の規模に応じて決まっています。以下は技能実習1号の実習生の受け入れ可能人数になります。
受入企業の常勤職員数 | 受入可能な1号実習生の人数 |
---|---|
301人以上 | 常勤職員総数の1/20人 |
201~300人以上 | 15人 |
101~200人以上 | 10人 |
51~100人以上 | 6人 |
41~50人以上 | 5人 |
31~40人以上 | 4人 |
30人以下 | 3人 |
常勤職員には技能実習生は含まれません。なお、常勤職員の数を超える人数の1号実習生は受入れできませんので、例えば常勤職員が2人の企業は技能実習1号の実習生は2人までしか受入れができません。なお、2号実習生は上記の人数の2倍が上限になります。
【注意】建設分野は上乗せで基準が設定されている
建設分野での技能実習生の受け入れは通常の認定基準に加えて上乗せで独自の基準が定められています。建設分野は実習場所が現場単位になり実習生の管理に要する人員が多くかかる点や、他分野と比べて失踪者が多い事が理由です。
建設分野独自の認定基準
・建設業許可保有業者である事
・キャリアアップシステムに登録している事
・報酬が月払い制である事
・技能実習生の数が常勤職員総数以下である事
人数については2022年4月1日時点で常勤職員数以下となるよう調整することが義務付けられています。
【注意】計画と異なる実習を行う場合
技能実習計画が認定された後に、実際の実習が計画とは違うものだと計画認定制度の意味がありません。そのため、やむをえず計画とは異なる実習を実施する場合は変更認定の申請や軽微な変更の届け出を外国人技能実習機構に対して行う必要があります。
変更認定申請
計画に関して重要な変更があったときは事前に機構に対して変更認定申請を行い変更について認定を受ける必要があります。重要な変更とは、技能実習の内容や目標、実習期間や時間数、監理団体など技能実習計画の根幹にあたるものの変更をいいます。
軽微変更届出書
重要な変更以外の変更があった場合は、変更から1ヶ月以内に軽微変更届出書を提出します。軽微な変更の例としては、受け入れ企業の役員や指導員の変更、実習場所や実習生の宿泊施設の変更などがあげられます。些細な変更であれば届け出もが不要なケースもありますので、判断に迷った場合は外国人技能実習機構に確認しましょう。
実習困難時届出書
万が一受け入れ企業での実習継続が困難になった場合は、遅滞無く実習困難時届出書を提出します。たとえば受け入れ企業の倒産など経営上の都合や、技能実習生の病気や怪我が発生した場合などが該当します。
技能実習計画認定にかかる費用
技能実習計画の認定には手数料が必要で、その費用は技能実習計画1件につき3,900円です。認定申請時に外国人技能実習機構に対し口座振り込みで納付します。なお、技能実習計画認定申請を行政書士などの専門家に依頼する場合の報酬額は10~15万円が一般的な相場となっています。
技能実習計画の認定申請についてまとめ
以上、ここまで建設業社様むけに技能実習計画認定申請について解説してきました。
技能実習制度の趣旨・目的を達成する為にもこの技能実習計画の作成はもちろんのことその内容も非常に重要になります。初めて技能実習生を受け入れる場合は非常に大変な作業に感じると思いますが、団体監理型の場合は監理団体の指導を受けながら、きちんと認定を受けられる計画を作りこんでいきましょう。