建設キャリアアップシステムシステムとは、2019年から国がはじめた「建設現場で働く技能者のキャリアを業界統一のルールで蓄積していくシステム」です。
すでに公共工事では多くの現場で利用され、元請業者から登録を支持された下請け業者もいるのではないでしょうか?
「この建設キャリアアップシステムのメリットとデメリットがいまいちよくわからない・・・」そういったご相談を最近よく頂きます。そんな皆様の為に、本記事では建設キャリアアップシステムの簡単な仕組みと、そのメリット・デメリットをどこよりも詳しくご紹介していきます。
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本記事のポイント
システム利用のメリットは技能者・事業者共に多い
デメリットは利用料金の負担
公共工事に参加する事業者は利用がオススメ
建設キャリアアップシステムとは?
建設キャリアアップシステムは、2019年10月から国の肝いりで開始されたシステムで、技能者の就業履歴や保有資格などを業界統一のルールで蓄積していくシステムです。
その仕組みは極めてシンプルで、システムに登録した技能者には個別のICカードが配布され、そのカードを利用して技能者本人が自身の就業履歴などを蓄積していく仕組みになっています。簡単な利用の流れは以下の通りです。
建設キャリアシステム利用の流れ
①技能者情報の登録
②カードの交付・現場での読取
③技能者のキャリアの見える化・活用
①技能者情報等の登録
まず「技能者」の情報をキャリアアップシステムに登録します。こうする事で、技能者のキャリアが蓄積されていく箱ができる事になります。この「技能者」を登録する為には、その技能者が所属する「事業者」もシステムに登録をする必要があります(これを事業者登録を言います)
②カードの交付・現場での読み取り
登録が完了し、情報を蓄積していく箱ができた技能者にはそれぞれ「建設キャリアアップカード」というICカードが交付されます。このカードが本システムの最も重要なアイテムになっており、技能者は工事の現場に入場する際に、このカードをカードリーダーにタッチすることで、その現場での就業情報が記録・蓄積されていきます。
なお、現場にカードリーダーを設置するのはその現場を開設する元請業者の役割になっています。
③技能者のキャリアの見える化・活用
上記①と②により技能者個人の就業実績が蓄積されていくことで、その技能者のキャリアがひとつのシステムで見える化されるようになります。建設現場で働く技能者は、複数の現場を転々とする働き方の為、そのキャリアがわかりにくく、適切な能力評価がされにくいという課題がありました。今回のシステムにより技能者のキャリアが見える化されることで、職場での適切な能力評価や処遇改善などに効果が期待されています。
出典:国土交通省
建設キャリアアップシステムシステムは加入義務無し?
建設キャリアアップシステムシステムは現時点では加入の義務はありません。
※外国人労働者を雇う場合はその事業者と外国人本人は登録をする必要があります。
つまりシステムに登録するかしないかは、任意という事になります。そのため、システムを利用するかしないかはそのメリットしだいという事になってきますね(元請事業者から登録するよう指示された場合などは別ですが)。
しかも、建設キャリアアップシステムシステムの運用は技能者だけでなくその所属事業者や、建設現場を開設する元請事業者の協力も必要不可欠になりますので、双方にメリットがあるか無いかが重要なポイントとなってきます。
建設キャリアアップシステムのメリットとデメリット一覧
ではここからは、この建設キャリアアップシステムのメリットとデメリットを、「事業者」、「元請事業者(現場開設事業者)」、「技能者」の3つの立場からそれぞれご紹介していきます。
メリット | デメリット | |
事業者 | ・公共工事の加点になる自治体がある ・経営審査事項の加点になる ・施工能力や初回保険加入状況が見える化アピールしやすい ・出面管理が簡易になり支払い賃金根拠も明確化できる | ・登録料がかかる(5年に1回) ・管理者ID利用料がかかる(毎年) ・登録の手間がかかる |
元請事業者※ ・現場管理の効率化をはかれる ・事務作業の省力化がはかれる | ・現場利用料がかかる(利用頻度に応じて) ※事業者として「登録料」「管理者ID利用料」は別途必要 ・登録の手間がかかる | |
技能者 | ・技能を適正に評価され処遇改善につながる ・自身のキャリアを簡単に証明できる ・退職時の建退共掛け金を漏れなく積み立てれる | ・登録料がかかる(10年に1回) ・登録の手間がかかる |
※元請として現場を開設する事業者
事業者のメリットについて
ではまずは事業者のメリットについて紹介していきます。
公共工事の加点になる自治体がある
これは今後、建設キャリアアップシステムを利用する最大のメリットになっていくと考えられます。
国がシステムの普及を強く推し進める中で、建設キャリアアップシステムへの登録を公共工事の加点項目に設定する自治体が出てきました。
加点条件:事業者登録かつ雇用関係にある技能者を登録をした場合2点加点、それ以外は0点(令和2年1月公告から評価開始)
「建設キャリアアップシステムの事業者登録をしていること」及び別項目の要件を満たしている場合、5点の加点。
また宮城県や栃木県、長野県、静岡県、熊本県なども公共工事への加点を検討していることを公表しており、今後各自治体で同様の動きは加速する事が考えられます。
出典:国土交通省
経営審査事項の加点になる
建設キャリアアップシステムの利用は経営審査事項の加点ポイントになりますので、公共工事への入札をする事業者にとっては非常に魅力的なメリットと言えます。
※経営事項審査について知りたい方は「経審とは?経営事項審査について解説」のページを参照ください。
【Z1:技術職員数】
建設キャリアアップシステムにおいて、レベル4、3と判定された者の数に応じて新たに評点を付与。
※令和2年4月1日から開始
【W10:知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況 】
基準日後3年間において、建設キャリアアップシステムでレベル2以上にアップした建設技能者の割合に応じて評点を付与(最大10点) 。
※令和3年4月1日から開始
施工能力や社会保険加入状況が見える化
事業者登録をする事で、その事業者の雇⽤する技能者の数や保有資格、社会保険加⼊状況等が明らかになるため、取引先からの信頼が得やすくなるメリットがあります。反対に言うと社会保険加入状況などが良くない業者にとってはデメリットともいえます。
また、所属する技能者の能力評価レベルに連携して事業者の施工能力も見える化される為、より施工能力の高い専門工事業者が適正に評価され、発注者に選ばれる環境に繋がっていきます。
出面管理が簡易化・支払い賃金根拠も明確化
出⾯管理がIT化され効率的かつ正確に行えるようになります。現場で従事した職種や⽴場も履歴として登録されるため、それらの情報により支払う賃⾦の根拠が明確になります。
デメリットは登録料や管理者ID等の利用料
一方でデメリットですが、それはやはり費用面での負担になります。システムを利用する為に必須となる事業者登録には、登録料を支払う必要があり、5年に一度更新の度に支払いが必要です。
金額ですが、事業者の規模に応じて、6,000円から240万円までと非常に幅があります。規模の大きい事業者であればあるほど、登録料の負担は大きくなります。
資本金 | 料金(円) |
1人親方 | 0 |
個人事業主 | 6,000 |
500万円未満 | 6,000 |
500 万円以上 1,000 万円未満 | 12,000 |
1,000 万円以上 2,000 万円未満 | 24,000 |
2,000 万円以上 5,000 万円未満 | 48,000 |
5,000 万円以上 1 億円未満 | 60,000 |
1 億円以上 3 億円未満 | 120,000 |
3 億円以上 10 億円未満 | 240,000 |
10 億円以上 50 億円未満 | 480,000 |
50 億円以上 100 億円未満 | 600,000 |
100 億円以上 500 億円未満 | 1,200,000 |
500 億円以上 | 2,400,000 |
また、登録料以外にも、管理者ID利用料というものを事業者は毎年支払う必要があります(1IDあたり11,400円)。
この管理者IDは事業者登録した事業者に1つ必ず与えられるIDになりますので、事業者がシステムを利用する為には、最低でもこの登録料と管理者ID利用料を負担しなければならないのです。
元請事業者のメリットについて
では次に、事業者の中でも、元請事業者として現場を開設する事業者には、さらなるメリットがありますのでそちらを紹介していきます。
現場管理の効率化をはかれる
元請業者は、下請業者やその技能者の情報や稼働状況をリアルタイムに把握する事が可能になります。そのため、技能者の保有資格や経験、社会保険加入状況の確認が簡単に行え、現場管理が効率的に行えます。
※なお稼働現場以外は、技能者と所属事業者の同意がなければ情報は非開示とされます。
事務作業の省力化がはかれる
元請業者は現場で行う事務作業が非常に多く、作業者の負担が大きくなりがちですが、建設キャリアアップシステムがその作業を省力化します。
システムに施⼯体制を登録し、技能者の就業実績を日々記録することで、作業員名簿や施⼯体制台帳の⾃動作成が可能になります。このような法令で必要な書類等の作成を、自動化やペーパーレス化することで事務作業の省力化をはかることが可能になるのです。
また元請業者の建退共に関する事務も省力化が可能になります(発注者への就労実績報告の電⼦化、証紙受払簿作成が不要、下請への証紙交付枚数の⾃動計算)。
出典:国土交通省
デメリットは大きな負担となる現場利用料
元請として現場を開設する事業者は、技能者がICカードをかざして就業履歴を記録するためのカードリーダーを設置しなければなりません。その際、技能者が就業履歴を記録する度(ICカードをかざすたびに)現場利用料が10円かかってきます。
これは元請事業者の大きな負担となり、最大のデメリットともいえます。
例えば、50人の就業者がいる現場であれば、1日当たり50人×10円=500円の利用料がかかります。工期が90日であれば、その現場でトータルかかる現場利用料金は500円×90日=45,000円という事になります。
技能者のメリットについて
それでは再度に、技能者が建設キャリアアップシステムを利用するメリットを紹介します。
技能を適正に評価され処遇改善につながる
建設キャリアアップシステムはもともと業界の人手不足を解決する手段として、技能者の処遇改善を目的に作られた仕組みです。今後さまざまな取り組みが官民一体となって開始される予定になっており、それらを利用できるという大きなメリットがあります。
例えば、技能者の資格や能力、実績に応じて技能レベルを4つに分け(レベルごとに4種類のカードを発行)、そのレベル(カード)によって処遇や給与基準が決まってくる仕組みなどが検討されています。
キャリアが正確に蓄積され見える化される
建設業従事者は、様々な事業者の現場で働くことが多いことから、自身のキャリアを一貫して証明することが非常に大変でした。しかし建設キャリアアップシステムを利用する事で、各現場での就業履歴が個人の技能者情報に蓄積され、かつその情報を利用者個人は簡単に閲覧する事が可能になります。
それにより自身のキャリアを簡単に証明する事が出来、自身のキャリアアップ・転職活動などにも生かす事が可能になります。
退職時の建退共掛け金を漏れなく積み立てれる
建設業界で働く人のための退職金制度である「建設業退職金共済制度(建退共)」の掛金を確実に充当する事が可能になります。現在の仕組みでは、対象者は参加した現場で証紙を受け取り、その証紙を共済手帳に貼り付け退職時に提出することで、その証紙の数に応じた額の退職金が支払われます。
この仕組みは、多重下請け構造の建設業界において、就業実績に応じた正確な証紙の発行・受取が行われていない課題がありました。
それを受けて、対象労働者の就労実績を確実に掛金充当につなげるために、キャリアアップシステムにより蓄積された就業実績の建退共掛金充当への活用が、2023年を目処に原則化される予定です。
出典:国土交通省
デメリットは技能者登録料
技能者が建設キャリアアップシステムを利用するデメリットも、やはり費用面の負担という事になります。技能者者登録の登録料金は、インターネット申請の場合で2,500円です。
事業者登録の登録料や現場利用料に比べるとそこまで大きな負担ではありませんが、技能者登録料を事業者が雇用する技能者全員分に関して負担するケースも多く、そうなると多くの技能者を抱えている事業者ほど、技能者登録料の負担も大きくなってしまいます。
結局建設キャリアアップシステムは利用すべき?しないべき?
ここまで建設キャリアアップシステムを利用するメリットとデメリットについて紹介してきました。
「結局、建設キャリアアップシステムは利用すべきなの?しないべきなの?」
という感想を持たれた方も多いのではないでしょうか?ここからはあくまで私的な見解も入りますが、建設キャリアアップシステムを利用すべきかどうかのお話をします。
結論!公共工事の受注が多い事業者は利用を検討すべき!
まず結論として、公共工事の入札に毎年参加しているような事業者は、入札時の加点や経営審査事項の加点などのメリットを考えると、システムに加入すべきだと思います。
この公共工事への加点や経営審査事項の加点は、登録事業者のメリットというよりは、建設キャリアアップシステムを利用せざるを得なくするための施策であると批判があるのも事実です。しかし今後、この流れはますます広がっていくと思われますので、システムを利用することでの費用より、システムを利用しない事による機械損失の方が増えていく可能性は十分に考えられます。
今後の世の中の流れを見極めることがポイント
現時点では建設キャリアアップシステムの登録は推奨されていますが、義務化はされていません。
※ただし、外国人労働者を雇用する事業者は義務化されています
そのため、システムの利用が自社にとって負担の方が大きいと判断すれば利用しない事も可能です。しかし今後、建設キャリアアップシステムに登録しない事が、建設業を営む上でデメリットとなっていく可能性は十分に考えられます。今は元請事業者を中心に登録が進んでいるため、例えば、下請け先の選定を建設キャリアアップシステムに登録している事業者を優先的に行うなどの流れが起きてくることも考えられるでしょう。
まだ建設キャリアアップシステムに登録していない事業者は、取引先の状況や世の中の流れをしっかり把握し、自社や自社で働く技能者にとって良い選択をしていくことが求められます。
利用する為の登録方法について
建設キャリアアップシステムを利用するには、システムに登録してICカードを発行してもらわなければなりません。
この登録申請は原則インターネット申請になっており、登録される為の審査には1ヶ月~3カ月程度、場合によってはそれ以上の日数がかかりますので注意しましょう。
また、登録は技能者だけでなく、その技能者が所属する事業者も登録する必要があり、またそれぞれの登録は下記の図のように事業者と技能者がそれぞれ個別にしなければならず、一括で両方を申請することはできません。また、登録の順番としては、ます事業者登録をして事業者IDを取得してから、その事業者に所属している技能者登録をするという手順が基本になります。
出典:国土交通省
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まとめ
以上、建設キャリアアップシステムのメリットとデメリットについて紹介してきました。
建設キャリアアップシステムは利用が義務付けられていないからこそ、事業者がその制度をしっかり理解した上で自分たちで利用の判断をしなければなりません。
なお、登録したいけど登録作業が面倒な方は、行政書士さんにお願いする事も可能ですので、その方法もご検討されると良いでしょう。